とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

高校女子サッカー準決勝 常盤木学園 対 十文字

 今週末は、アジア杯で日本代表のゲームがあり、高校サッカーの準決勝と決勝も行われる。さらにプレミアリーグは動いており、観たいゲームがてんこ盛り。その中ではあまり注目を集めていないかもしれないが、高校女子サッカーもいよいよ決勝戦を迎える。対戦チームは常盤木学園と星槎国際湘南。決勝戦を観戦する前に、先週行われた準決勝を録画して、観よう観ようと思ってきたが、身体の不調もあり、これまで観ることができなかった。ようやく決勝戦の直前になって観戦する時間ができたが、これがなかなか興味深いゲームだった。

 女子サッカー、それも高校生年代となると、キック力も弱く、速さも男子に比べれば格段に落ちる。これがテニスであればラリーの応酬など、男子にはない楽しみがあるが、サッカーの場合、女子ならではの見所は少ない。カワイイとかスポーツとは別の視点での楽しみはあるのだが、やはり観始めは物足りなさを感じてしまう。そんな感じで観始めた準決勝だが、常盤木学園の布陣がわかりにくい。十文字はきれいな4-4-2。石谷を中心に原田がからむ2トップに、右SH三谷と左SH浜田が両サイドから仕掛けていく。中盤には小柄だがサッカーをよく知っているCH瀧澤がいて、ゲームをつくる。GK横山は170cmを超える長身だ。

 対する常盤木の布陣は3-4-3。DFは右から軍司、大河内、佐々木と並ぶが、サイドのCBが大きく開き、中盤から西野や柴山が下がってゴール前を守る。FWは長身の中村をセンターに、右WG加藤栞、左WG安澤が入るが、彼女らがDFラインまで下がって来ることはない。中盤は西野と柴山のボランチに、沖野と加藤愛が前目。彼女らはシャドーと言ってもいいかもしれないが、守備の時にはCBの外側、通常SBやWBが守るエリアまで下がってくる。そう、3バックながらWBがいないのだ。考えてみれば、高校女子サッカーでは大きなサイドチェンジのパスが放たれることは少なく、ワイドの放り込まれた場合にもサイドのCBやIHが追いかければそれで足りる。FWはCF中村が右サイドに開くことも多く、その場合には右WG加藤栞がCFに入る。中村らが守備を担当することはないのだ。そして中盤の人数を増やし、早い攻守の切り替えとプレスでボールを奪って攻めていく。そんな常盤木のサッカーがまさに嵌ったゲームだった。

 序盤、常盤木の流動的な動きに、十文字の守備がなかなか選手を掴み切れない。6分、右CB軍司が駆け上がり、ミドルシュートを放つ。十文字も9分、左SH浜田のクロスにFW石谷が飛び込むが、わずかに届かない。22分には右SH三谷のドリブルから、FW石谷のクロスに右SH三谷がシュート。序盤は互角の展開だったが、常盤木がセットプレーから次第にペースを掴んでいく。23分、左WG安澤のCKにCH柴山がヘディングシュートを放つと、25分には右WG加藤栞の落としからCH柴山がミドルシュート。そして34分、左WG安澤CKにCH西野がヘディングシュート。GK横山がファインセーブで手に当てるが、こぼれたボールを左IH沖野が押し込んだ。常盤木学園が先制点を挙げた。

 常盤木学園は38分にも左IH沖野のスルーパスにCF中村が抜け出してシュート。これはGK横山がファインセーブ。さらにCF中村がミドルシュートを放つが、これはバーの上に外れた。常盤木の中盤の寄せが早く、十文字が前を向いてゲームを作ろうとするところで再三ボールを奪われてしまう。それでも41分、FW原田の縦パスに右SH三谷がヘディングシュート。これはわずかにポストの右。42分、CB油本の縦パスをFW原田が落とし、CH瀧澤がドリブル。左に流して、FW石谷ミドルシュートを放つが、枠は捉えられない。43分には常盤木の右WG加藤栞がドリブルで仕掛け、左SB渡邉を抜いて、クロスにCF中村がシュート。これはポスト右に外れた。前半は常盤木の1点リードで折り返した。

 後半頭、常盤木は右IH加藤愛に代えて津田を投入する。後半1分、右WG加藤栞から左サイドへ大きくパスが出ると、左WG安澤がミドルシュート。これもわずかにポスト右に外した。後半も中盤からプレスが早い常盤木。十文字は10分、左SH浜田がミドルシュートを放つが、GK今井が難なくキャッチする。逆に11分、左WG安澤のパスから右IH津田が縦へ。右WG加藤栞が走り込みシュート。GK横山がわずかに触れたシュートはバーを叩いた。その直後、常盤木は左WG安澤を下げて北川を投入。十文字も13分、左SB渡邉を井上に交代する。渡邉は指を脱臼していたという。

 それでも常盤木の攻撃は衰えない。14分、右WG加藤栞のミドルシュートがバーを直撃。16分には右IH津田がミドルシュート。そして24分、左WG北川の落としから左IH沖野が左に展開すると、CF中村のクロスに右WG加藤栞がDFの間をドンピシャのヘディングシュート。常盤木学園が追加点を挙げて十文字を突き放した。その後も常盤木が自由奔放に攻めていく。28分、CF中村のポストから左に流し、左WG北川がミドルシュート。33分、右IH津田もミドルシュートを放つと、35分には左IH沖野のクロスを左WG北川がヘディングで落とし、右WG加藤栞が飛び込む。これはわずかに届かなかった。

 十文字も20分にFW石谷を下げて佐原を投入したが、20分にはその佐原に代えて左SH松久を投入。34分にはFW原田に代えてDF野口を投入し、浜田と三谷をFWに、CB長を右SBに上げて攻めていく。左サイドは井上がSHまで上がっていたか、後半終盤は超攻撃的な布陣にして攻めていく。39分、FW浜田から左に展開。クロスから浜田がシュートを放つ。45分にもFW浜田がミドルシュート。だがいずれもGK今井がセーブする。最後まで攻め続けた十文字だったが、常盤木の守備も堅い。結局最後までゴールならず。2-0。常盤木がすべての面で完勝したゲームだった。

 インターハイで優勝した常盤木は、特出した選手はいないと言いながら、みんなよく動くし、攻撃にも迫力がある。そして女子サッカーの特徴をよく踏まえた布陣が非常に効果的。インターハイでは善戦した十文字を寄せ付けない強さがあった。決勝の相手は星槎国際湘南。ダイジェスト番組ではパスをつなぐサッカーと紹介されていたと思うが、準決勝では東海大福岡を4-0で一蹴して勝ち上がってきた。13日の決勝が楽しみになってきた。