コロナ禍が続くが、たまには違う話題を。先日、ある会合で副業の是非が話題となった。現在はまだ多くの会社で、原則、副業禁止となっているが、一人が「本業を活性化するためにも、副業は認めなければいけないのではないか」と言い出した。ちなみに、会合のメンバーはいずれもまだ副業禁止の会社に勤めている。副業での経験が新たな視点をもたらして本業の活性化につながるという趣旨は分かるのだが、副業に熱心なあまりに本業がおろそかになってしまう懸念もある。本業で怠けさせないため、「業務評価をしっかり行う」ことは当然だろうが、それが副業へのチャレンジを委縮させてしまわないようにはしたい。
本業における給与を8割程度にカットして、副業をせざるを得ない状況にするという選択肢もないわけではないが、副業容認の目的は本業の活性化であって、人件費カットではない。「副業OKだが、給与は低い」会社と、「給与は高いが、副業禁止」の会社だと、どちらを選ぶだろうか。
前者を選ぶようなチャレンジ精神に富む人間の方が将来性を感じるが、必ず結果を出すというわけではない。じっくり落ち着いて本業に励むことで、結果を出していくタイプの人間も多い一方で、本業に安住してしまう人間も多い。また、前者の場合、副業の方により魅力を感じて転職してしまうことが懸念されるが、後者であっても、大して役に立たないまま、ダラダラと勤務されるくらいなら、転職してほしいという者はけっこういたりする。
もっとも副業の是非が話題になるのは、大企業の総合職の場合であって、パートやバイトであれば副業は当然認められる。現在、私が勤める会社には一人、大手企業を定年退職後、個人事業主として起業する傍ら、週3日、当社で営業に従事している者がいる。彼にとってはどちらが本業かわからないが、当社としては彼の経験やネットワークは大いに役立っている。
アメリカでは約1/4の成人が副業を持っているそうだ。その背景には、雇用に当たって職務内容を記載した職務記述書(ジョブディスクリプション)の作成が一般的であることが挙げられる。そもそも、本業・副業と言っても、雇用する企業にとっては常に本業だが、本人にとっては本業・副業の区別を付けることに意味はない。マルチジョブホルダー(複数就業者)というそうだが、定年後の働き方としては魅力的だし、若年層にとっても一定の期間内に複数の職業を経験できるとすれば意味がある。
コロナショックに伴う経営低迷の中、給与をカットして副業を容認するという企業が出てくるかもしれない。若しくは、副業希望者に限って給与カットの上、容認する。この話をした時は、まだ今ほどコロナ禍が深刻な状況ではなかったのだが、今回のコロナショックを機に、今後は「副業OKだが、給与は低い」会社が増えてくるかもしれない。