とんま天狗は雲の上

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熊本豪雨災害に対する4000億円超の経済対策の欺瞞

 13日、豪雨災害に見舞われた熊本県を安倍首相が視察した。最近になく早い対応だなと思ってニュースを見ていたら、「4000億円超の経済対策を行う」旨を記者団に向かって話していた。その醜悪さに思わずチャンネルを変えた。

 その後、新聞等を読むと、午前中には「球磨村特別養護老人ホームの前で黙とうを捧げた」とのことだし、熊本県の蒲島知事から「速やかな復旧・復興に向けた財政支援など」の要望もあったということなので、「早期復旧に4000億円超を投入」と表明したのは仕方ないのかもしれない。または、マスコミがその部分を切り取って報道したということもあるのかもしれない。

 それでもやはり私は、被災者を前に、すぐにカネの話をするということがひどく醜悪な感じがし、耐えられなかった。あのニュースを見て、「馬鹿野郎。俺はカネが欲しいわけじゃない」と思わず怒鳴った被災者もいたのではないか。熊本県知事も「財政支援」とは言ったが、現時点で金額まで要望したとは思えないし、被災者にしてみればまずは復旧することしか頭にないだろう。そもそも4000億円超という金額も、どこまでを対象としたものかはっきりしない。河川の改修補強まで含めるとすれば、とても4000億円では足りないし、4000億円超の「経済対策」としている点も気になる。

 4000億円を床上浸水した家屋約5000棟で割れば、一世帯当たり約8000万円。すごい金額がもらえると思う被災者もいるかもしれないが、たぶん災害支援のために給付される見舞金等はこれまでの事例と変わらないはず。応急仮設住宅や災害公営住宅なども建設されるだろうが、過去の災害事例を上回る支援があるはずもない。また、インフラ等の改修整備は現場の状況に応じて進められるだろうが、必要以上の整備を行うこともない。

 だから淡々と積み上げれば、相応の金額は積み上がるだろうが、現時点で4000億円超というのは、全くのつかみ金。とりあえず相当の金額を提示すれば、「みんな『すごい!』と言ってくれるだろう」という程度の話に過ぎない。上述したように、インフラ整備に係る費用をどこまで算入するかで対策費の総額などどうとでもなるはずだ。

 そしてそのうちのいくらかは「経済対策」として予算化する。「Go To KUMAMOTO」キャンペーンでもするのか、くまモンを活用したイベントでも開催するのか。そしてそれら事業を実施するための事務費の相当分は電通などに回る。これってナオミ・クラインが言った「ショック・ドクトリン」に通じるのではないか。惨事便乗型の経済対策。惨事便乗型のポピュリズム政治。

 それにしても、災害視察に行って、すぐにカネの話をするというのは、なんとさもしいことか。今の政権を担っている人々は常に、カネのことしか頭にないのだろうか。カネをやればみんな黙るし、喜ぶとでも思っているのだろうか。水害で亡くなった高齢者の遺族が「おばあちゃんのおかげで見舞金をたくさんもらえたよ」と言うとでも思っているのだろうか。