とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

フットボール批評issue35

 特集は「サッカー4局面の解剖学」。だが、このところ冒頭に掲載される連載、「現代サッカーの教科書」と「フットボールの主旋律」では、まず4局面を否定するところから始まる。しかしそれはあくまでドイツやイングランドの最先端のサッカーの話。実際にはまだ4局面で指導し、考察することは十分有効だし、多くの現場では4局面で指導がされている。二つの連載以降に掲載される記事にはそのことがちゃんと記述されているし、よく理解できる。何でも新しい理論で語ればいいというものではない。

 また、後半に掲載されているフットサルやバスケットにおける戦略の記事は面白いし、参考になる。そして毎回難解な印象のある井筒陸也の連載「フットボールとは何か?」も、今号は大学での盟友だという呉屋大飛との対談で、イキイキと読みやすい。今号から籾木結花の連載もスタートした。このところ、冒頭の連載を読むたびに、そろそろ購読を止めてもいいかと思うが、これはもう少し購読を続けなければならないか。次号も楽しい内容であってほしい。

 

 

○4局面すべてを極めるオールラウンダー型にすべての人間を急に作り変えるのは難しい。…だが…局面の位置付けならば変えられるかもしれない。…欧州のサッカーはそのような発想から4局面を一体化させる方向に進化のベクトルが向いているように思える。具体的には攻撃中に守備の準備をし、守備をしながら攻撃の仕込みをしておくことで局面をシームレス化するという考え方です。(P61)

○一番大事にしている部分は『インテリジェンス』です。…『この陣形で相手がこう来たら、あそこに穴が開く』といった一連の考察を試合中に行い、実行できる選手。あくまでも身体能力や技術はそれらを実行したり、そもそも選択肢を増やすものだという認識です。(P66)○能力が劣るチームが格上のチームに対して頭を使ってやっつけるときは、逆にトランジションを増やしちゃいけないと思うんです。/トランジションを増やせば増やすほど体力のあるほうが勝つ・・・。逆にあえてゆっくり攻め…『切り替えを減らす』やり方が、すごく重要じゃないかなと考えています。(P94)

○彼らを観察していると、おそらく「決まりごと」…に反した行動をとっている瞬間に優位なのは「原則を破っている」という意識よりも「本質に従っている」という自己表現にまつわる欲求なのではと感じる。だから自分が最善だと思う選択と、指導者が求めていることに誤差が生まれた時に、ナチュラルに…最善を選択することができる…。原則は、規則でも校則でもない。フットボールは、訓練ではない。…こちらの選手は自由や例外が求められる場面で身体的・精神的に解放される傾向にあり、日本人はやれと言われていないことを前にすると身体的・精神的にやや固まってしまう傾向がある。(P100)