市立船橋をPK戦で勝ち上がってきた青森山田に対し、近江は大量得点・大量失点の攻撃サッカーで初の決勝まで進出した。青森山田の市立船橋戦が凡庸な内容だっただけに、これまで近江のサッカーを観ていないが、ダイジェストで伝えられる報道を見ている限り、近江のサッカーに興味を抱いた。柔よく剛を制す。そんな勝負を見てみたいと思った。
青森山田の布陣は4-2-3-1。米谷をワントップに、トップ下に福島。SHは右に杉本、左に川原。菅澤と芝田のダブルボランチに、SBは右に小林、左に小沼。CBは山本虎と小泉。GKは小泉。市立船橋戦と全く同じ先発メンバーだ。対する近江の布陣は4-3-3。小山をトップに、山門と浅井がシャドーに入る。WBは鵜戸と廣瀬が左右に開き、ダブルボランチは西と川上。CBは右から安田、西村、金山。GKは山崎。10番をつけるキャプテン金山が左CBにいるということは、かなり攻撃的なサッカーを目指しているのだろう。
序盤、青森山田が自慢の屈強な身体能力を生かし、積極的にデュエルを挑み、その強さを見せる。一方、近江は、線は細いが、ドリブルと短いパスをつなぎ、かつ寄せは速く、人数をかけて攻めていく。対照的な戦い方だが、互角でゲームは進む。やはり近江のサッカーは面白い。青森山田のデュエルに負けず、近江も人数をかけて厳しく寄せて、激しいデュエルの応酬。13分には近江の左FW浅井が青森山田のCH菅澤に身体を当てられ、昏倒。立ち上がってもふらついて、しばらくピッチ外に出るという状況もあったが、浅井はしばらくしたら何とかピッチに戻って、その後は何もなかったかのようにプレーを継続。よかった。
15分、青森山田の左SB小沼がミドルシュート。これが両者、初めてのシュート。それでも攻め込む近江に対して、18分、青森はカウンター。OH福島の縦パスからCF米谷がドリブルで持ち込み、右に流して、右SH杉本のクロスにCF米谷がシュート。だが、CB西村がブロックした。逆に20分には近江が押し込み、混戦の中からCH西がシュート。これはDFにブロックされたが、近江が積極的に攻めていく。お互い目まぐるしく攻守が入れ替わる面白い展開だ。
そして33分、青森山田がショートカウンターで攻め上がり、CH芝田から右に展開すると、右SH杉本のクロスにOH福島がシュート。前にCH芝田が走り込んだことも効いた。青森山田が先制点を挙げた。近江も42分には左FW浅井がロングシュート。さらに44分には右FW山門の縦パスから左FW浅井がシュート。さらに混戦の中からCH西がシュート。青森山田のDFにブロックされたが、先制されてもまだまだ近江の攻撃は衰えない。前半はこのまま青森山田の1点リードで折り返した。
後半頭、近江は小山を下げて、CF山本諒を投入。廣瀬を左CBに下げて、金山を左WBに上げた。すると2分、左FW浅井がカウンターで持ち上がると、縦パスに走り込んだのは左WBの金山。折り返したクロスをCF山本諒が決めて、近江が同点に追い付いた。しかしその後は青森山田が力攻め。11分、左SB小沼のクロスにCF米谷がヘディングシュートをすると、14分には左SB小沼のロングスローのクリアをCH芝田がミドルシュート。
そして15分、近江が攻め込んだ展開から、青森山田のGK鈴木が前線に大きくフィード。これをヘディングでCH芝田がつなぎ、左SH川原もダイレクトで前にパスを入れると、走り込んだのはCF米谷。CB西村とGK山崎をかわし、シュート。青森山田が再び勝ち越した。近江が攻め込んだ一瞬の隙？ いや、GKのフィードからワンタッチで繋いだ青森山田のプレーが見事だった。CF米谷の走り込みにコース取りも良かった。
するとその後は青森山田が一方的に攻め込む展開になっていく。17分、近江は廣瀬に代わって、左CB川地。米谷をマークする。18分、左サイドで起点となったCF米谷のパスから左SH川原がくさびのパス。OH福島が右に展開して、右SH杉本がシュート。そして25分、近江のCKをはね返すと、拾った右SH杉本が自陣からドリブル。いったん左に流して左SH川原から戻ってきたパスを杉本がシュート。これは戻ってきた左WB金山の足に当たってコースが変わり、そのままゴールに吸い込まれていった。青森山田がオウンゴールで3点目を挙げた。
いよいよ本気にさせてしまったように、その後も青森山田の勢いが止まらない。こうなってみると青森山田は守備力だけでなく、攻撃力も鋭い。さすがに疲れが出たか、動きもやや少なくなり、ミスも増えた近江を王者のサッカーで圧倒する。32分、CH芝田のFKからCF米谷がヘディングシュート。36分、近江は浅井を下げて左SH荒砂を投入するが、流れは変わらない。42分には右SB小林の強烈なミドルシュートがポストやや右を襲う。40分には杉本に代えて、CF津島を投入。米谷が右SHに回る。さらに45＋2分には齊藤と別府を投入。時間を使い、そのままタイムアップ。3-1。青森山田がその実力を発揮して、プレミアリーグに続いて、2冠を達成した。
黒田監督が退任し、正木監督に代わった青森山田だったが、やはりその強さは本物。身体能力だけでなく、サッカーの内容も強かった。特にカウンターは見事。身体能力で負けない強さを生かし、相手ゴール前まで最速で辿り着き、冷静にゴールを重ねた。しかし、近江の奮闘も称えられてしかるべき。予想以上に面白いゲームとなったのは、彼らのどこまでも衰えない運動量と攻撃精神があったから。それでもやはり青森山田の守備は強かった。新年早々面白いサッカーを観ることができた。両チームの選手に「ありがとう」と言いたい。
