とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

世界はナラティブでできている

 「思考には、論理と物語という…二つの方法がある。」(P15)。そして、世界各地で哲学者が出現した時代から、論理こそが真実に至る思考法であり、物語的思考は信頼ができないと退けられてきた。しかし、物語思考こそ創造性の源であり、人類の進歩や発展を生み出してきた思考法なのだ。

 ということを、アリストテレスの時代、さらにその前から、現在に至るまでの多くの哲学者らの思想などを紹介しつつ、述べていく。本書の後半では、物語思考を実践するためのノウハウまで提言する。でも正直、わかりにくい。翻訳本だからだろうか。それとも、そんなの当たり前、という気がするからだろうか。

 論理も大事だが、物語思考も大事。両者を両輪として思考することで、人類は進歩し発展する。それだけのことを延々と読まされた感が強い。私の読みが浅いからかもしれない。たぶんそうだろう。けっこう難しい本だった。

 

 

○思考には、論理と物語という、少なくとも二つの方法がある。…物語と論理は、認識論的方法が違う。論理の方は等式という方法を採る。…すなわち、「これとあれが等しい」と、永遠の現在形で語るのである。物語の方は実験という手法を採り、「これがあれを引き起こす」というものなので、過去/現在/未来の区別が必要である。…多くの場合、一方の手法でできることを、他方はできない。物語は永遠の真実を算出できないし、論理はオリジナルの行動を生み出すことはできない。(P15)

○脳は部分的にはコンピューターのように作動する。しかし、人間の脳は大部分、ナラティブの機械のように作動する。というのも、脳の主目的の一つは行動の決定であるからだ。行動するためには因果推論、言い換えると物語思考が必要なのである。(P16)

○私たちの意識の中で、創造性は物語思考として立ち現れるのである。物語思考は、私たちの脳が、新しい行動の連鎖を繰り返すことである。私たちは独自の行為を計画し、現在の行動による将来への影響を推定し、観察された結果から原因を仮定し、何がなぜ起こるのかを一般的に想像する。これはヒトという種だけが持つ適応のための優れた力であり、文化、科学、ビジネス、テクノロジーといった、生命を改善する大変な発明を成し遂げた。(P61)

○生命を持続させる可能性を回復するために私たちは…物語と哲学の矮小化に歯止めをかける必要がある。この矮小化は…哲学が唯一の真実にプロットを見つける道具だと私たちが考えるようになった時に加速した。であるので、この…ただ一つの見方から私たちを救い出し…哲学が元来持っていた機能を取り戻さなくてはならない。さらに…物語本来の機能を取り戻さなくてはならない。(P196)