とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

ナカタさんのオタマジャクシ

 全国で空からオタマジャクシが降る事象が多発して騒がれている。このニュースを聞いて最初に思ったのが「海辺のカフカ」。主人公の少年が精神障害のある中年ナカタさんとともに四国をめざした旅に出る。その最初のサービスエリアで、突然空から魚が降ってきた。どうやらナカタさんが怒りを感じたりするとこうした超常現象が起きるらしい。小説はこのシーンを不思議な物語の始まりの出来事として置き、その後の非現実的な出来事への導入の役を果たしている。
 ちょうど村上春樹の「1Q84」が発刊されたばかりでもあり、多くの人がオタマジャクシ事件から「海辺のカフカ」の中の1シーンを思い起こしたはずだが、意外なほどにこの二つを関連して取り上げる記事やブログは少ない。もちろん、真面目な新聞記事にナカタさんの超能力について書きわけにはいかないかもしれないが、ナカタさん探しなんて、けっこう週刊誌ネタとしては面白いと思うのだが。
 小説のその後の展開は、ナカタさんの行動がキーとなって、大きな石を動かし、世界が展開する。オタマジャクシは世界変革のきざしなのだ。そう考えれば、現在の世界同時不況によって引き起こされつつある世界の権力構造の変化や金融構造変革、小さくは自民党政権の終焉など、今後予想される大変化の予兆として取り上げるのは、気の利いたユーモアではないのか。どうして誰もそういう取り上げ方をしないのだろう。
 実はブームの割には誰も村上春樹を読んでいないとか、変革を望まない勢力からの締め付けがあるとか・・・。しかしいつか歴史を振り返るとき、このオタマジャクシ事件も一緒に語られることがあるのではないか。
 いや実はオタマジャクシが空から降るなんてことは昔からよくある出来事で、変革を表立って書けないマスコミが海辺のカフカへの連想を期待して書いているネタフリの事件なのだろうか。
 オタマジャクシはいったい何を予兆し、世界を動かす要石はいったいどこにあるのか。謎が謎を呼ぶ事件である。