とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

ザック・ジャパン 最高の船出

 メッシ、テベスミリートカンビアッソマスケラーノエインセブルディッソ・・・。最高のメンバーが並ぶアルゼンチン相手に、ザック・ジャパンは最高のパフォーマンスを見せ、何と初めての勝利を挙げてしまった。
 アルゼンチンのメンバーに時差ぼけと疲れがあったという話もあるが、日本だって、香川にしろ、長友、本田、長谷部、内田、森本にしろ、ヨーロッパから急きょ駆け付けた選手が大半を占め、コンディションはあまり言い訳にならないのではないか。ミリートカンビアッソボラッティと筋肉系の故障で途中交代する選手がアルゼンチンに続出したのは、事前の準備が不足していたかもしれない。が、とにかく日本はアルゼンチンに勝った。それもほとんど日本ペースで日本がコントロールしたゲームだった。
 何よりうれしいのは、最後まで守備意識高く、DFラインを高く保って、かつ時間コントロールも行いつつ勝ち切ったことだ。この点でこれまでの代表にないすばらしいゲームを見せてくれた。W杯ベスト16の自信はこれほどまでに選手の意識を変えるのかと、正直驚いた。
 それでも立ち上がりはアルゼンチンが強烈なプレスをかませ、栗原を慌てさせ日本がピンチを招いた。しかし何とかこれを乗り切ると、次第に日本代表も落ち着きが出てくる。6分には香川、本田とつないでクロスに岡崎が飛び込む。
 7分にはカンビアッソからメッシに預けると、ドリブルからミリートとパス交換しシュート。9分、本田から内田のクロスに岡崎がシュートを放つと、アルゼンチンも14分、メッシ、ダレッサンドロとつないでメッシがドリブルで切れ込みクロス。しかしこれはGK川島がしっかり弾き返す。
 そして19分。岡崎のクロスを本田がキープ。マスケラーノが突いて出たボールに長谷部がミドルシュートを放つと、GKロメロが弾いたボールに岡崎が飛び出して、なんと日本が先制点を挙げる。それまでも前線から効果的にプレスをかけ、守備でも森本一人を残してしっかり戻り、複数で囲みこむ動きがよくできていた。
 なかなか前線に入っていけないアルゼンチンは25分、テベスミドルシュートを放つと、27分にはメッシのFKがゴール右隅を襲う。川島がナイスセーブ。さらに29分にもメッシの華麗なドリブルが見られたが、日本のプレスの前にパスが分断され、なかなかシュートシーンが見られない。
 日本は39分、本田から長谷部のクロスに香川がゴール前でキープ。切り返してシュートを打とうとするがDFに囲まれる。41分にはカウンターから今野からの長いクロスに香川が逆サイドに流して本田が中央に切れ込んでシュート。42分、森本から香川、本田、長谷部とつないで、右サイドでフリーの内田がドリブルからシュート。惜しくも枠を外れた。ここでハーフタイムの笛。すばらしい前半だった。
 アルゼンチンは前半のうちにケガでミリートカンビアッソイグアインボラッティに交代。と言っても力が落ちるわけでは全くない。15分にはこの日不調のダレッサンドロパストーレに交代。さらに攻撃的になって得点を取りに来る。5分、GKからのフィードがイグアインに通ってひやっとしたが、7分には岡崎のクロスに香川がシュートを放ち、まだまだ前に出る勢いを失うことはない。11分にはデンマーク戦を思い出す本田のFK。これはGKに弾かれる。
 14分、メッシがミドルシュート。19分、CKからのボールに栗原がハンドを犯すが、ファールを取られなかったのは助かった。21分にはテベスがメッシとのワンツーからシュート。
 しかし日本も20分に森本に代えて前田を投入。あくまで攻撃的な姿勢を崩さない。と、22分、香川のスルーパスに本田がシュート。25分には前田がドリブルからシュート。さらに27分、前田が右サイドからいいクロスを送り込んだが、惜しくも本田に合わない。
 アルゼンチンもいよいよ必死になる。30分、テベスのポストにメッシがシュート。31分にはメッシからパストーレとのワンツーからクロスを上げるがイグアインが追いつかない。
 日本は後半26分に、阿部と関口を送ると、32分には憲剛も投入。しかし最後までバランスが崩れることなく攻撃的な姿勢を堅持。37分、内田のクロスに前田がヘディングシュート。43分にはカウンターから前田がドリブルでDFを置き去りにしてGKと一対一になるがシュートはGKに当たってしまった。
 最後まで積極的な姿勢を見せた日本は、親善試合ゆえの短いロスタイムもあり、アルゼンチンを相手にホームとは言え初めての勝利を挙げた。すばらしいゲームだった。ザッケローニがどんなサッカーを見せるか、日本全国が注目していたが、まさかここまですばらしいサッカーを見せてくれるとは。
 これからの4年間がどんな結果になるのかわからないが、まずは最高のスタートを切った。ザッケローニの顔も、来た当初は「何かボケた時代遅れのオヤジ」という印象だったが、このゲームでは非常に精悍で充実感に満ちた勝負師の顔になっている。まるで別人のようだ。さてザッケローニは、オシムトルシエを越え、日本サッカーの救世主となるのか。もちろんクラマー氏を越えることを願っている。