とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

日本代表の冒険 南アフリカからブラジルへ

 2010年南アフリカワールドカップの記録である。元はスポーツポータルサイトスポーツナビ」に連載していたものを加筆・修正したものである。「日本代表の冒険」というタイトルがつけられているが、必ずしも日本代表だけでなく、ワールドカップの期間中、南アフリカに到着した日から決勝戦までの30数日間に筆者の感じたこと、考えたことを綴っている。
 南アフリカを初めとするアフリカの各国チームの健闘と脱落。スペインの優勝に至る経緯。ドイツやオランダ、ブラジル、アルゼンチンなど、大会を彩ったチームの記録。南アフリカの大会関係者や国民、さらには各国サポーターの行動。そしてもちろん日本代表チームの奮闘まで、あますことなく綴られている。
 これを読みながら、1年近く前になるあの当時の記憶を思い出していた。観戦記録を読みながら、再び胸に熱い思いがこみ上げてきた。楽しかったあの1ヶ月。だが、日本代表は既にザッケローニを監督に迎えて、新たなスタートを切り、かつアジア杯優勝というタイトルも手に入れた。今年にはさっそく3次予選も始まる。ブラジル大会への鼓動は始まっているのだ。
 この幸せな1ヶ月をまた経験するためには、日本代表には何としてもブラジル大会への出場を決めてもらいたい。そして、岡田監督が示したベスト16の指標を乗り越えてほしい。夢への道程は早くも始まっている。代表の活躍を期待したい。

日本代表の冒険 南アフリカからブラジルへ (光文社新書)

日本代表の冒険 南アフリカからブラジルへ (光文社新書)

●それでも、何はともあれ、史上初となるアフリカ大陸でのワールドカップは開幕した。始まってしまえば、あとは閉幕までの1ヶ月、残り63試合の長丁場を突っ走るしかない。であるならば、可能な限り、この破天荒な大会を最後までとことん楽しみたいものである。/「あなたがたはゲームを楽しむべきです!」/このマンデラの言葉を、私は今大会を通して順守したいと思う。(P41)
●いささか大仰な表現であることを承知で言えば、ワールドカップとはスポーツというコードに則った「異文化の衝突」である。当然、そこには双方のイメージギャップがいくつも介在し、お互いが90分間死力を尽くした先に、新たな相互理解が生まれる―そう、私は認識している。(P112)
●今大会の「ベスト16」は、2010年代から20年代にかけて、日本代表が超えるべき指標となるはずだ。このボーダーラインを明確に提示したことこそ、第2次岡田政権の一番の成果であったのだと思う。(P325)
●そもそも「トータルフットボール」という概念を、なぜオランダが採用し、発展させたかといえば、間違いなく「効率的に」「勝利するため」であった。・・・そうして考えるなら、今大会の「美しさよりも結果」という発想は、これまでの形骸化した美意識への強烈なアンチテーゼであると同時に、効率性と実利の追求という、オランダの国民的DNAに則した行動様式への原点回帰であったと私は考える。(P353)