とんま天狗は雲の上

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なぜ日本人はマネジメントが苦手なのか

 職場研修で著者の岡本氏に講師を務めていただいた。その際に本書がテキストとして配布された。講義は、要点だけが記載されたレジュメにより進められたが、途中で挟まれるジョークや事例などのほとんどが、本書にそのまま掲載されておりびっくりした。3時間の講義録が1冊の本にまとめられている。本書を読めば、岡本氏の3時間の講義を聞いたも同然だ。
 岡本氏が提唱するのは、PDCA法に代わるPh-P法によるマネジメントである。とは言っても、PDCA法を全否定している訳ではない。PDCAのうちのP(Planning)が十分できていないから機能不全を起こすのだと指摘し、Pの部分を5つのPhasaに分けて示す。Ph-P法とはすなわちPhased Planning法である。
 岡本氏が示す5つのステップは、「1.現状把握」「2.課題特定」「3.目標設定」「4.手段選択」「5.集団意思決定」である。これにPDCA法における2つの過程「6.手段実施の確保」「7.結果と目標の比較」を加え、7つのステップでマネジメントせよ、と言う。
 Planの5つのステップは全くそのとおりである。そして至極当たり前である。だが、これが日本人はなかなかうまく作業できていないと指摘する。「現状と環境の混同」、「日本的モラリズム」、「よい現状の原因も探ること」、「切り捨てられた目標にも十分気を止めること」、「手段と目標の混同」、「決定権者が決定し責任を持つこと」、「善意の義務違反」、「評価指標の問題」など、ロジカルなマネジメント遂行を妨げる日本的慣行、日本的モラリズムが横行している。しかしそれらを注意深く避け、ロジカルに各ステップを進めることが必要だと言う。
 内容には深く同意する。実践は難しい場面も少なくないが、ぜひ取り入れて実行していきたい。それが仕事を効率良く進めることにつながるだけでなく、何より私の精神衛生上よい。そう、人は、自分も含め、やりたいことをやって生きていきたいものだから。

なぜ、日本人はマネジメントが苦手なのか

なぜ、日本人はマネジメントが苦手なのか

●かつて・・・OECDでは、「経済」というものを「あらゆる種類の価値の創造と分配」と定義していたが、これはまさに、金銭授受を越えた定義だ。ここで言う「価値」とは「人が嬉しさを感じるもの」のすべてであり、経済の意味をこのように広く考えれば、例えば「宗教」も、「信じるもの」を求める人(需要)と与える人(供給)がいる以上、経済の一部だと言えるのである。(P78)
●意識や心に原因を求めてしまうと、そこで思考が停止してしまい、システムに関する原因が見えなくなる。・・・こうした「人々が自然に持っている欲求」を直視しないのが「日本的モラリズム」と共産主義の共通点かもしれない。(P112)
●「よいマネジメント」とは、「すべての人々がその欲求やモラル感覚の方向に向かっていくと、全体が自然に目標の方向に向かっていく」というものなのだ。(P165)