日経新聞のマーケティング等に特化した専門紙が、日経MJ。なぜか当社でも購読をしており、12月2日付の紙面を何気なく見ていたら、「伊藤元重のエコノウォッチ」というコラムで「ネトフリ流 サブスクのツボ」という記事が掲載されていた。
サブスクリプション方式により映画等を配信するネットフリックスについて、経済学者らしく、限界費用などの経済用語を駆使して、そのビジネスモデルを解説するものだが、その中に「こうした料金設定で成功している好事例が、コストコが展開するホールセールクラブだ」という文章があった。えっ、コストコってサブスクリプション?と一瞬びっくりしたが、よく読むとその前に「サブスクリプションではないが、」という前置きが付いている。それはそうだろう。
だが、「コストコが会費収入をあてにして、商品の価格を限界費用に近いところまで下げ、消費者に高い満足感を与えている」という解説には、なるほどと思った。もっともコストコは実のところ、すべての商品が安いわけではなく、近くのスーパーで買った方が安い商品も多くあるので、わが家ではしっかり選別しながら購入している。つまりコストコは、会費収入だけではなく、「ついで買いの心理」も賢く利用しているということだとは思うが。
それにしても最近は「サブスクリプション」が大きな話題になっている。考えてみれば、DAZNやスマホの通信料、スポーツクラブの年会費などもサブスクリプションだし、ディズニーやUSJの入場料、ひょっとしたら家賃もサブスクリプションと言えるのかもしれない。しかしわざわざサブスクリプションと言って話題になっているのは、これまで商品一つひとつについて価格があり、「料金と費用のマージンで稼ぐ」(記事から引用)ことが一般的だった商品やサービス提供について、一定額を支払えばその期間、自由に使い放題とした点が評価されているのだろう。
私などは古いタイプの消費者なので、こうしたサブスクリプション方式に対して、「本当に得だろうか」「月に何回利用するだろうか」と比較検討してしまうが、それでも最近はそうしたことにも疲れてきた。最近は買いたいモノもなく、食料品以外はほとんど買い物をしていない。私の現在の収入に対して、どの程度の水準で消費をしたらいいのか、よくわからない。いっそのこと、政府に毎年一定額を収めると、その額に見合った服やクルマなどが定期的に届けられるとラクなのに。でもそれはひょっとして共産主義か、それとも戦中の配給制か。
そうかもしれないが、もういい加減、消費に追いまくられる生活はイヤになってきた。そう考えると実は、サブスクリプションには20世紀以降進展した高度消費社会を打破する可能性を秘めているのかもしれない。これはベーシックインカムにも通じる気がするが、最低と言わず一定の生活保障や生活支援は政府等が行うとなれば、消費とは何か、生きるとは何かが問われることになる。サブスクリプションはどこまで行くか。そこから次の未来が見えてくるかもしれない。