とんま天狗は雲の上

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FIFAワールドカップ2022 決勝 アルゼンチンvs.フランス

 ワールドカップ決勝はアルゼンチン対フランス。メッシ対エムバペ。屈指の好カードになった。初戦、サウジアラビアに苦杯を喫した時はとても決勝まで進出するとは思わなかったが、その後は快進撃。オランダとはPK戦になったが、それ以外は快勝。準決勝ではクロアチアを3-0で撃破した。この間、メッシは5得点。前回大会まで、「戦術メッシ」と揶揄されてきたアルゼンチンだったが、それをさらに洗練させ、胸を張って「戦術メッシ」と言えるまでになった。

 一方、フランスはグループリーグの最終戦でメンバーを落とし、チュニジアに敗戦したが、それでもグループは首位通過。その後もポーランドイングランド、モロッコと難敵を下して決勝まで上がってきた。中でもイングランドとの対戦はこの大会の中でも最高のゲームの1つだ。ポグバ、カンテ、ベンゼマがいない中で、しっかり守って、エムバペの爆発力に賭ける。グリーズマンの活躍も見逃すわけにはいかない。

 アルゼンチンの布陣は4-3-3。アルバレスをトップに、右WGメッシ、左WGにディマリア。中盤はエンソ・フェルナンデスをアンカーに置いて、右IHデパウル、左IHマクアリステル。DFは右SBモリーナ、左SBタグリアフィコ。オタメンディとロメロのCBに、GKはエミリアーノ・マルティネス。ディマリアが先発し、前線の形を変えてきた。一方、フランスも同じ4-3-3。ジルーをワントップに、右WGデンベレ、左WGエムバペ。中盤はチュアメニをアンカーに、右IHグリーズマン、左IHラビオ。DFは右SBクンデ、左SBにテオ・エルナンデス。ウパメカノとバランのCBに、GKはロメロ。こちらはいつもの形。ラビオとウパメカノが復帰してきたのはよかった。

 序盤はアルゼンチンが優勢にゲームを進める。5分、左IHマクアリステルのミドルシュート。8分には左WGディマリアのクロスから右IHデパウルミドルシュートを放つ。フランスはディマリアを左WGに置くアルゼンチンの布陣に戸惑っていた感じ。17分には左SBテオ・フェルナンデスから右IHデパウルがボールを奪い、右WGメッシとのワンツーで抜け出して、デパウルがクロス。メッシがスルーすると、左WGディマリアがシュート。枠は外したが、メッシとディマリア、アルゼンチンのベテラン二人が躍動する。

 フランスはようやく20分、フリーズマンのFKにCFジルーがヘディングシュート。だが公式にはこれもシュートとして認められない。そして21分、左WGディマリアが仕掛けると、右WGデンベレの手がディマリアにかかり倒してしまう。主審はPKを宣告。23分、メッシがPKを決めて、アルゼンチンが先鋭点を挙げた。その後もパスを繋いで攻めるアルゼンチン。36分、CBウパメカノのフィードを右SBモリーナがカットすると、左IHマクアリステルが落とし、右WGメッシが右に繋いで、CFアルバレスがスルーパス。左IHマクアリステルが走り込み、左に流して、左WGディマリアがシュート。自陣からダイナミックかつダイレクトにパスが繋がり、一気にゴールまで陥れた。見事なゴールでアルゼンチンが2点目を挙げた。素晴らしい。

 フランスは41分、早くもジルーとデンベレを下げて、左WGテュラムと右WGコロムアニを投入。エムバペをFWに上げて、何とか打開しようと模索。前半はこのままアルゼンチンが2点のリードで折り返した。

 後半に入ってもアルゼンチンの優位は変わらない。4分、右WGメッシが左に流すと、左WGディマリアが大きく右へサイドチェンジ、右IHデパウルボレーシュートを放つ。GKロメロが正面でキャッチした。選手交代をしたフランスだが、一向に攻め手がみつからない。14分、左WGディマリアのスルーパスにCFアルバレスが抜け出してシュート。15分には左WGディマリアの仕掛けからクロスを右IHデパウルがスルー。右WGメッシがDF3人に囲まれながらシュートを放っていく。

 19分、ここまで全力でプレーし、アルゼンチンにゴールをもたらしたディマリアをアクーニャに交代。アクーニャは下がり目の左SHに入り、4-4-2の布陣で守りを固める。すると23分、フランスは右IHグリーズマンのCKに右WGコロムアニがヘディングシュート。ポスト左に外れたが、これがフランスのこのゲーム最初のシュートだった。さらにフランスはグリーズマンをトップ下に上げて、テュラムをFW、エムバペを左SHに戻す。4-2-3-1の布陣に変えてきた。26分、左SHエムバペがミドルシュート。これは枠を捉えることはできなかったが、その直後、グリーズマンとテオ・エルナンデスを下げて、右SHコマン、左SBカマビンガを投入。コロムアニを左SHに回し、再びエムバペをトップに上げた。今度は4-4-2の布陣。アルゼンチンは27分、FWメッシのキープから戻しをCHエンソ・フェルナンデスがミドルシュートを放つ。

 しかしこの布陣変更で次第にフランスに勢いが出てきた。逆に言えば、アルゼンチンの選手に疲れが見えてきて、前半ほどのプレスに行けなくなったかもしれない。そして33分、自陣からのカウンター。後方からのパスをFWエムバペが前に蹴り出すと、左SHコロムアニがドリブルで前進。そのままPA内に入っていくと、対応したCBオタメンディの手がコロムアニの肩にかかり倒してしまう。微妙な判定だったが、前半のアルゼンチンのPKと同じ判定。35分、このPKをエムバペが決めて、ようやくフランスが1点を返した。

 1点を返されてもそれまで同様のペースでアルゼンチンがパスを繋いで攻めようとしたが、36分、FWメッシから右SHコマンがボールを奪うと、CHラビオが左に展開。FWエムバペがヘディングで落とすと、FWテュラムが戻してエムバペがボレーシュート。わずか1分、フランスが同点に追い付いた。何と! その後はフランスが一気呵成に攻め立てる。40分、FWテュラムのドリブルから、左に流して、FWエムバペのクロスに左SHコロムアニが飛び込むが、わずかに届かない。

 この時間帯、コロムアニがFWに入り、テュラムとエムバペは頻繁にそのポジションを入れ替える。42分、左SHテュラムの仕掛けにCHエンソ・フェルナンデスが対応。PA内でテュラムが倒れるが、主審はPKを取らない。逆にテュラムのシミュレーションでイエローカードが提示された。45+3分にはFWエムバペがドリブルからミドルシュート。45+4分、右SHコマンの仕掛けにDFが付いていけない。クロスを左SBカマビンガが落とし、CHラビオがシュート。だがGKエミリアーノ・マルティネスがセーブ。アルゼンチンも45+7分、FWメッシが強烈なミドルシュートを放つが、GKロリスがファインセーブ。結局、90分で決着つかず。ゲームは延長戦に突入した。

 延長戦の最初にアルゼンチンは右SBモリーナをモンティエルに交代する。一方、フランスは6分、CHラビオをフォファナに交代。お互い選手の疲れがピークになってくる。10分、右SHコマンのFKのクリアをCBウパメカノがシュートするが、DFがブロック。12分にはアルゼンチンがアルバレスとデパウルを下げて、CHパレデスとCFラウタロ・マルティネスを投入。布陣を4-3-3に変更した。するとそこからまたアルゼンチンが勢いを取り戻す。

 14分、CHパレデスの縦パスから左WGアクーニャがミドルシュート。15分、右WGメッシが左IHマクアリステルとのワンツーから右に流し、CFラウタロ・マルティネスがシュート。はね返りを右SBモンティエルがミドルシュートするが、CBウパメカノがブロックする。15+1分には左WGアクーニャの縦パスにCFラウタロ・マルティネスが走り込んで、シュート。だがポストの左。延長前半はややアルゼンチンが優勢な形で終わった。

 すると延長後半2分、右WGメッシがミドルシュート。そして3分、右SBモンティエルのフィードをCFラウタロ・マルティネスが落とし、右WGメッシが左に展開。左IHマクアリステルが右前にパスを送ると、CFラウタロ・マルティネスが抜け出して、シュート。GKロリスが身体に当てたが、こぼれ球を右WGメッシが押し込んだ。アルゼンチンが再び1点リードした。フランスは8分、CBバランが立ち上がれない。CBコナテに交代。アルゼンチンもマクアリステルを下げて、CBペセッラを投入。3-4-3にして1点を守る態勢。

 だが直後の右SHコマンのCKを左SHエムバペがシュート。これが右SBモンティエルの手に当たる。PK。13分、エムバペが決めて、再びフランスが同点に追い付いた。エムバペは決勝戦の場でハットトリック達成。さらに攻めるフランス。15分、左SHエムバペのクロスにFWコロムアニが飛び込むが、わずかに届かない。残り時間もない中で15+1分、アルゼンチンはタグリアフィコに代えて、左WGにディバラ。アクーニャを左WBに下げて、さらに攻めの姿勢。一方、フランスは右SBクンデをディサジに交代した。

 さらにその後、熾烈なまでの最後の攻防が続く。15+3分、右WGメッシのスルーパスにCFラウタロ・マルティネスが抜け出して、シュート。GKロリスがセーブ。直後、CBコナテのフィードにFWコロムアニが走り込み、シュートを放つが、GKエミリアーノ・マルティネスがビッグセーブ。さらにその直後には、右WGメッシのスルーパスに右WBモンティエルが走り込み、クロスにCFラウタロ・マルティネスがヘディングシュート。右に外れる。するとフランスも15+4分、左SHエムバペが仕掛けて、CBロメロ、CHパレデス、CHエンソ・フェルナンデス、さらに守りに走ってきた左WGディバラまで抜きにかかるが、シュートは打てず。そしてタイムアップ。3-3。稀に見る激闘はPK戦で決着をつけることとなった。

 PK戦はフランスが先行。1番手エムバペが決めると、アルゼンチンもメッシが余裕でゴールを決める。フランスの2番手はコマン。だがGKエミリアーノ・マルティネスがナイスセーブ。アルゼンチンはディバラが真ん中に決めて、フランスの3番手チュアメニのPKはポスト左に外した。その後、パデレス、コロムアニと決めて、アルゼンチンの4人目はモンティエル。彼が着実に決めて、アルゼンチンが4-2。PK戦に勝利し、36年ぶりの優勝を決めた。

 喜ぶメッシ。ついに、偉大なマラドーナの幻影を破って、メッシもW杯のトロフィーを抱いた。得点王こそエムバペに譲ったが、大会MVPを手にして、ジュールリメ杯にキスをした。まさにメッシのための、メッシの大会だったと思う。メキシコ大会がマラドーナのための

マラドーナの大会と言われたように。おめでとう、メッシ。おめでとう、アルゼンチン。そして日本もいつの日か、この美酒を味わう日が来ることを願いたい。神の子メッシが日本に降臨するその日に、いつか。