とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

不要不急だが、不要ではない。不況のトリクルダウンを止めよ。

 いわゆる感染クラスターと名指しされたライブハウスやスポーツクラブを始めとして、多くの業種で売上が減少したり、収入がストップするなどの影響が出ている。こうした中、コンサートがことごとく中止となってしまった新日本フィルハーモニーのメンバーがテレワークでパプリカを合奏して注目を集めている。

 テレビを観ていたら、これを始めたトロンボーン奏者の山口ひさと氏が「自分たちが『不要な職業』だと言われているような気がして落ち込んだ」と言っていた。確かに、「不要不急な職業」だと言われればそうとかもしれないが、「不要な職業」ではない。外出自粛が要請される中で、自宅での楽しみを提供するという意味では、ネットでの演奏配信は意義ある行為だった。今月初めには無観客で上演されたオペラ「神々の黄昏」が注目を集めたが、コンサートやステージショーであれば、テレビでの放送やネット配信も可能だし、収益を上げる仕組みも検討されていい。テレビ局もこうした番組の提供をもっと増やしてほしい。

 ちなみに、「不要不急な職業」として他に思い付くのは、娯楽・レジャー産業や教育・研究職などだろうか。教育を「不要不急」と言ってしまっていいのかと疑問に思わないではないが、休校要請がされたということは、日本政府はそう判断したと言っていい。もちろんいずれも、一時的に休止しても人々の生活に当面の支障はないという意味であって、「不要」ではない。そう考えると、政治家も「不要」とは言わないが、「不要不急な職業」ではある。もっとも彼らはたとえ議会に出席しなくても、報酬だけは満額支給される。仕事を休むとそれが収入減に直結する職業からみれば、何とも理不尽に感じるだろう。

 ちなみに、私も「不要不急な職業」に分類されるはず。それでも経済の低迷が長期に続けば、遅からず影響は及んでくる。それは私だけでなく、政治家も含めて、全ての「不要不急な職業」の人、さらには「不要不急でない職業」の人たちにもいずれはその影響が及んでくる。不況のトリクルダウンは好況時とは違い、確実に社会全体に及んでいく。「不要不急な職業」も含めて、今、生活に不安を抱える職業の人々をしっかり支えていくことは重要だし、必要なことだ。世界経済が同時に凋落しつつある現在、自分だけは逃げ切れるという人は誰もいない。

 

新日本フィル:ベートーヴェン 交響曲全集 3

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