19日に政府の新型コロナ対策本部会合があり、都道府県をまたぐ移動の自粛が解除された。さっそく、先週末には多くの人が県外の観光地へと出かけたようだ。東京アラート解除後も東京ではいよいよ多くの感染者数が発表されているが、地方に住む者にとって怖いのは、東京からの旅行者である。もちろん地方でも観光業で生活している人々にとっては、待ちに待った県外移動の自粛解除だろうが、その他の一般住民にとっては、感染がまだ十分収まっていない地域からの旅行者は脅威以外の何者でもない。今回の自粛解除によって、地方で新たな感染が広がったらどうするのか。そう考えれば、地方の住民にとっては、東京などから大勢の観光客が押し寄せるような観光地へは当面近寄らないように「自衛」するしかない。県内観光は当面「自粛」しよう。
ところで、「自粛」という言葉は本来、誰に要請されるでもなく、「自ら進んで、行いを改め、慎むこと」ではなかったか。それが今回、まるで強制するかのように、「自粛が要請」された。「粛」には、(1)静まり返ること、と(2)慎み、畏まること、の二つの意味があるようだが、要請されて、思わず静まり返った結果が「自粛」だったのかな?
だが調べてみると、「自粛」という言葉には、「自らの判断で行動を慎む」というよりも、「周囲の空気、社会的な動きに呼応して、自らの行動を慎む」という意味合いが強いようだ。すなわち、「自粛を要請」というのは、「自ら、行動を慎む、慎まざるを得ないような雰囲気、社会的風潮を作り出すこと」を当初から意図した言葉なのかもしれない。
こうした社会的風潮や雰囲気を気にすることなく、自らの主体的な判断で行動を慎む場合には「自重」とか、「自制」という言葉を使う。すなわち私は、先週から都道府県をまたいだ移動の自粛要請が解除されたが、自らの判断として、県内観光地へ行くことを「自重」しようと思う。
ところで、星野リゾートの星野佳路さんが、「Withコロナ期の旅のありかた」としてマイクロツーリズムを提唱している。実に合理的だし、魅力的な提案だ。地域活性化という点でも大いに意味がある。今回の自粛解除は、専ら仕事や個人的(結婚式や法事など)な用事による県外移動について自粛を解除するものだと思っていたが、政府から特にそうしたコメントはなかった。結果、マイクロツーリズムを提唱する星野リゾートにも県外から多くの観光客が押し寄せることになってしまったのではないか。できれば政府には、「観光については、まずは県内における旅行=マイクロツーリズムから始めてください」といったコメントがあるとよかった。まだ当分の間、インバウンド客が見込めない中、「新しい生活様式」の一つとして、「新しい観光様式」を周知する絶好のチャンスだったのに、せっかくの機会を逸してしまった。実に残念なことだと思う。