とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

風邪をひいても病院など行けない問題

 「喉が痛い」と言って早退した同僚が翌日、「病院で酷い目にあった」と嘆いた。聞くと、クリニックの受付で看護師に症状を伝えたら、駐車場での待機を指示され、以後は駐車場でのリモート受診を余儀なくされたと言う。「それって、今や当たり前ですよ」と応えたが、「今どきのPCR検査」でも書いたとおり、娘が1月に近くのクリニックへ行った時も同様の対応だった。先日、妻に付き添っていつものクリニックへ行ったところ、入り口のドアに「風邪の症状の方は、駐車場から電話をしてください」と書いた張り紙がしてあった。

 結局、同僚はPCR検査を受けることもなく、風邪薬をもらって、翌日はすっかり治ったようだ。もちろん、クリニック側の対応はよく理解できる。万一、新型コロナの患者だった場合、医師などが感染したら、そこを媒介となって多くの病弱な患者に新型コロナを感染させてしまう可能性があるのだから、十分な感染対策を取るのは当たり前だ。だが、患者にとっては、これまでのように、風邪をひいたと言って気軽に病院を受診することができない。面倒な時代になってしまった。

 だが考えてみると、たとえ新型コロナに感染していたとしても、病院へ行ったところで治療薬があるわけではない。自宅隔離を命じられるか、運がよければ病院や隔離施設へ入院させられるか。解熱鎮痛剤などの症状を和らげる薬はもらえるかもしれないが、経過観察を受けるだけのこと。それでいて、濃厚接触者の有無などを調査され、長期の休暇で職場などに迷惑をかけ、たとえ症状が無くなっても自宅から出られず、人によっては収入もなくなる。

 それならいっそ、病院など行かずに市販薬を服用し、自宅で症状が和らぐのを待つ方がマシ。そうして症状が無くなれば、普通に職場復帰ができるし、多少の迷惑だけで済む。万一、新型コロナに罹患していたとしても、多くの場合、症状は軽症のようだし、たとえ重症化しても治療薬はないのだから、その時に救急車を呼べばいい。自宅療養をしていた患者が突如重症化し、人工呼吸器やECMOの装着が間に合わず、亡くなるというケースも起きているが、自宅療養と入院の差はそこだけではないのか?

 考えようだが、単なる風邪の可能性、新型コロナに罹患しても無症状で済む可能性、自宅療養や入院して2週間以上の隔離を余儀なくされる可能性、突如重症化して死亡する可能性。それらの可能性を勘案すると、多少の風邪症状であれば、病院などへは行かず、市販薬で対応し、様子を見る、という行動が一番合理的のような気がする。

 でもそれは同時に、新型コロナの感染拡大を放置することでもある。今どき軽い風邪症状なら病院へ行くのは鬱陶しい。そう考え行動する人が多いから、新型コロナの感染がいつまでも治まらないのだろうか。それとも、新型コロナによる重症化に怯え、少しの風邪症状でも病院を受診してPCR検査を受けた結果、陽性となる人が多いのだろうか。

 もしかするとワクチンを接種すれば、風邪の症状があった場合にも「ワクチン接種をしたのだから新型コロナではない」と考え、病院へは行かずに市販薬で済ます人が増えるかもしれない。そうなればPCR検査の受検者も減り、感染者も減少する。新型コロナのステルス化。それがいいこととも思えないが、ワクチン接種の効果は実はここにあるのかもしれない。愛知県も再び緊急事態宣言下に入ってしまった。今後、このコロナ禍はどう展開していくのだろう。我々は本当のところどう行動すればいいのか。まずは風邪をひいたらどうすればいいのか。そこから考えてみる必要があるのかもしれない。