とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

フットボール批評issue32

 今号の特集は「J2」。グランパスがJ2に降格していた時にはよく観たが、最近はすっかり観ていない。だが、リカルド・ロドリゲスヴォルティスにポジショナルプレーを持ち込んで以降、J2のサッカーは大きく変わったと言う。そして今季の注目はアルベルト率いるアルビレックス。そのアルベルト監督へのインタビューが面白い。中でも本間至恩は今見ておくべき選手のようだ。J1に上がる頃にはもう日本にはいないかもしれない。その他、ブラウブリッツ秋田の取材や、レノファ山口渡邉晋監督、ギラヴァンツ北九州小林伸二高木琢也岩政大樹の対談、北野誠辻尾真二へのインタビューも興味深い。今季、リカルド・ロドリゲスはレッズを指揮している。まだ大きな結果は見えてこないが、目を逸らさないようにしておきたい。

 井筒陸也の「『J2とは何か?』を考える」も興味深い。いつも井筒陸也の記事は小難しいが、今号も変わらない。理念が先走り過ぎているような気もするが、まあ知的好奇心は掻き立てられる。そして、岩政大樹の「デザインフットボール」が、言葉はやさしいが深い。「原則」と「判断」と「現象」を分けて考える。さらに「判断」も、「判断基準」と個人の「判断」に分けて、後者の重要性を語る。まさにサッカーは人生に通じる。

 他にも読んで楽しい記事が多かった。アーセン・ヴェンゲルの自伝「赤と白、わが人生」も面白そう。でもプレゼントのリストには挙げられていなかった。自分で買うしかないか。まずは図書館でリクエストしようっと。

 

 

○クロス対応でのマーキングは日本サッカーの大きな課題です。…選手の個人戦術はこれも大きな課題です、正しい状況判断を下せる選手が少なく、それは同じようなシチュエーションでの反復練習が多いからだと考えています。…日本の強みは土台にある選手の技術レベルの高さです。スピードもあります。ただ、より国内リーグの競争力を上げ、選手の状況判断のレベルを上げていかなくてはいけません。(P8)

○普通の会社でも…組織の中では日々様々なことが起こり、問題が発生すれば上司が部下を呼んで直接話をします。マネジメントで気をつけていることがあるとすれば…個人に対して何か気になったことがあれば…監督室に呼んで選手個人に話をすることです。…個人を侮蔑するような行為は、一般の社会…でも許されません。重要なのは人間らしく自然な振る舞いをすることです。そこには当然相手へのリスペクトも含まれます。(P12)

○J2には…負けないこと以上に、勝ってJ1昇格を獲得すること、そのためのスタイルを構築することにリソースが割かれる。そしてJ2はスタイルを構築するという険しい道程にいるにも関わらず、{J1から来たベテラン}という諸刃の剣を抱え、それぞれが「権利としての移籍」というカードを切るタイミングを見計らって、チームの結果を時に自らのために利用あるいは放棄する、そんなカオスなカテゴリー。(P108)

○人の細胞は、常に入れ替わり続けている。生命体は、作ることよりも壊すことに一生懸命で、そうやって先回りして破壊と再生を繰り返すことで…均衡を保っている…そして、これは組織についても同じです。…高校生くらいまでであれば、情報と人権を奪うことで成立した秩序は、今や幻想と化しました。…世の関心は、何事においてもビルドの方法についてだけど、ディストラクトの方法についても批評が必要かもしれない。(P109)

○選手の頭にはまず「原則」が浮かび、その上で「判断」がある。それによって行われるプレーが、「現象」として私たちに見えます。この「原則」「判断」「現象」のいずれの話をしているか、をピッチで話す言葉では明確に区別できていなければなりません。…「原則」はある。チームの「判断基準」も、同じ絵の共有のためには欠かせない。しかし、「判断」は選手のもの。…「判断」を指導者が決めてしまう言葉は…選手たちから「自分で考える」を奪ってしまうことになるのです(P117)