とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

東京五輪3位決定戦 メキシコvs.日本

 メキシコ五輪で銅メダルを獲った日本代表を見て、中学校ではサッカー部に入った。それから53年、あの時とは逆に、日本がホームの状況でメキシコと銅メダルを争う。メキシコにすれば53年ぶりのリベンジの機会とも言える。準決勝に残ったチームを見ると、ブラジル、スペイン、日本とグループリーグを首位で抜けたチーム。グループ2位のメキシコは準々決勝でグループ首位の韓国を破って勝ち上がり、そして準決勝でブラジルに敗れた。グループリーグ敗戦のリベンジマッチでもある。一方、決勝トーナメントに入って240分間、ゴールのない日本。悲願の銅メダルのためには、早い時間のゴールが必然だ。あとは守り切る。そのために日本はいったいどんなシナリオを描いてきたのだろうか。だが先発陣を見たら、これまでと変わらない。この時点で結果は見えていたのかもしれない。

 メキシコの布陣は4-3-3。マルティンをトップに、右WGライネス、左WGベガ。中盤はロモをアンカーに、右IHロドリゲス、左IHコルドバ。DFは右SBサンチェス、左SBアンフロ。バスケスとモンテスのCBにGKはオチョア。左SBを変更しただけで、他はグループリーグと同じメンバーが先発した。対する日本はいつもの4-2-3-1。林をトップに、トップ下には久保。右SH堂安、左SHに相馬。遠藤と田中碧のダブルボランチに、右SB酒井、左SB中山。CBに冨安が復帰して吉田と組み、GKは谷。こちらは冨安と板倉が交代しただけ。グループリーグの再戦といった感じだ。

 だがこのゲームは序盤からメキシコが積極的。3分、右WGライネスがカットインからミドルシュート。日本も8分、CH遠藤がミドルシュートを放つが、13分、OH久保と右SH堂安のところでボールを奪われると、左WGベガが仕掛けて、そのままPAへ迫る。後ろからCH遠藤が追いかけるが、PAギリギリの位置でベガを倒してしまう。ビデオではPAの外のようにも見えたが、VARで確認の末に主審はPKを宣告。これを左IHコルドバが決め、メキシコがPKで先制点を挙げた。グループリーグでは日本が幸運なPKをもらっている。これは仕方ない。互角に戻ったと思うしかない。

 18分、CH遠藤が仕掛けて、CF林の落としから抜け出すが、GKオチョアの飛び出しが早い。シュートは打たせてもらえなかった。すると22分、左サイドからの左IHコルドバのFKにCBバスケスがダイビングヘッドで飛び込む。ゴール。メキシコが追加点を挙げた。吉田と冨安の位置を越えて、ファーに走り込んだバスケスにはCH遠藤が付いていったが、振り切られた。遠藤にいつもの切れがない。厄日とはこのことか。

 それでもその後は日本が必死に攻める。25分、OH久保のパスから、左SH相馬が切り返して、ミドルシュート。28分、右SB酒井がCH田中の縦パスに走り込み、PAに近い位置でファールをもらう。これを久保が直接狙ったが、DFにブロックされた。30分にはCH遠藤の縦パスをCF林がうまくターンしてシュート。しかしGKオチョアがセーブする。その後も日本がパスを回して攻める時間が続いたが、決定機まではいかない。44分にはCF林の落としからCH遠藤の縦パスに右SH堂安が走り込み、クロスを入れるが、GKオチョアがセーブ。CF林には届かない。前半はこのまま2-0で折り返した。

 後半頭に日本は左SH相馬を下げて旗手を投入。後半も序盤、攻める日本。8分にはCH遠藤のクロスに右SH堂安がヘディングシュートするも、バーの上に外す。メキシコも9分、右SBサンチェスの縦パスをCB富安がカット。だがこぼれ球をCHロモが拾うと、ドリブルから左に流して、左IHコルドバがシュート。GK谷がナイスセーブを見せる。10分にはCHロモの仕掛けのこぼれ球がCFマルティンの元に入り、シュート。これはDFがブロックするが、その際に右WGライネスが負傷し、アントゥナに交代する。そして13分、これで得たCKをコルドバが蹴ると、後方から左WGベガが走り込んで、ヘディングシュート。ゴール。メキシコが3点目を挙げた。このCKもゴール前を固めるCB吉田とCB富安のいないスペースを狙ったセットプレー。CH遠藤が追いかけるが、またも振り切られてしまう。

 日本は18分、左SB中山とCF林を下げて、左SH三苫、CF上田を投入。旗手を左SBに下げる。19分、左SH三苫がさっそく仕掛けると、その流れから左SB旗手がミドルシュート。しかしわずかにポスト左に外れる。三苫は23分にもドリブルで仕掛けて、最後はCF上田がシュート。GKオチョアのナイスセーブに弾かれる。26分にはOH久保のパスから右SH堂安がミドルシュート。しかしこれも枠を捉えられない。

 この直後、日本は田中を下げて、CH板倉を投入する。29分、OH久保が無理な仕掛けからミドルシュートを狙うが、完全に焦っている。30分、中盤でボールをカットした右SB酒井のパスから左SH三苫が抜け出してシュート。だがGKオチョアのスーパーセーブの前にゴールが決まらない。32分、左SH三苫のドリブルから縦パスをCF上田がうまく反転してシュートを放つ。これもGKオチョアがファインセーブ。しかし33分、今度はOH久保が右からカットインして左に流し、左SH三苫が仕掛けてシュート。ようやく日本が1点を返した。

 メキシコは34分、ベガとコルドバを下げて、左WGベルトラン、左IHアルバラードを投入。日本も36分、CH遠藤に代えて、左IH三好を投入する。布陣も久保を右WG、堂安を右IHに置く、4-3-3に変更。三苫が左WG。39分、CH三好のミドルシュートはポストの左。メキシコも42分、マルティンと右IHロドリゲスを下げて、CFエドゥアルド・アギーレと右IHエスキバルを投入する。44分、右WG久保のFKから左SB旗手がミドルシュート。だがこれも左に外れる。45+1分、左WG三苫がドリブルからシュートも枠を外す。その後は吉田を最善に出すパワープレー。45+4分、右WG久保のクロスから左WG三苫ボレーシュートはGKオチョアがセーブする。そしてタイムアップ。3-1。日本53年ぶりの銅メダルはならなかった。

 そう言えば、あの時のスコアは2-0。杉山のパスから釜本が2得点。しかし53年後の日本には釜本のようなゴールゲッターはいなかった。林はよく頑張ったが、結局このゲームも無得点。堂安と久保が封じられた後、代わる得点源がいなかった。上田と三苫を先発させていればどうだったかと思うが、所詮タラレバ。それよりも二人へのマークを徹底するとともに、セットプレーで吉田と冨安にプレーさせなかったメキシコの攻撃がよかった。メキシコの戦略を組み立てたのは日本人の西村コーチ。だが日本のベンチに、西村氏に匹敵する戦略家はいなかった。

 中2日の日程が続いた東京五輪は、最後には遠藤の体力を奪い、ゴールを許した。選手個人の能力は上がっている。しかしそれをうまく使いこなす戦略が日本にはなかった。この後、秋にはW杯最終予選が始まり、来年にはW杯が開催される。このまま代表も森保監督にまかせて大丈夫だろうか。同じ結末が待っていないか。それももっと早い段階で。東京五輪、選手たちはよく奮闘した。しかし首脳陣がそれに付いていっていない。W杯に向けて危惧の念を抱いたのは私だけだろうか。選手にはまずはお疲れさまとねぎらいたい。だが戦いはまたすぐに続いていく。