とんま天狗は雲の上

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天皇杯決勝 ヴァンフォーレ甲府vs.サンフレッチェ広島

 天皇杯決勝が開催された。天皇杯と言えば、元旦の風物詩だと思っていたが、なぜこの時期に? W杯が理由だとは思うが、やはり違和感がある。昨年も年内に決勝が行われたが、それでもまだ12月だった。今年は10月。まだJリーグの行方も決まっておらず、ルヴァン杯でさえ決勝は来週だ。例年だと、Jリーグが終わった後、天皇杯の準々決勝以降が開催されるため、3位以内のACL出場を逃したチームが最後の出場権を懸けて天皇杯に臨む。そこで熱いゲームが期待できるのだが、今年は準々決勝も準決勝もJリーグの最中のミッドウィークに実施されている。当然、タイトな日程となり、ベストメンバーは組めなくなる。その結果のヴァンフォーレの決勝進出ではなかったか。

 Jリーグが終わり、W杯が終わった後でも、正月まではまだ時間があった。恐らく、国内組のほとんどはW杯に出場しないため、Jリーグ終了後から1ヶ月以上間を開けての天皇杯では、選手のコンディション上、問題があるということではなかったかと思うが、やはり寂しい。それならいっそ、女子の皇后杯のように、2月まで遅らせるという手はなかったか? ACLとの関係上、それも難しかったか。いやそれにしても、せっかくの天皇杯がもったいない。しかも国立ではなく日産スタジアム。結果を知った上で考えてみれば、選手のモチベーションという点でも、ヴァンフォーレサンフレッチェでは差があったかもしれない。J2でも下位に低迷し、何も失うものがないヴァンフォーレと、万一準優勝に終わっても、Jリーグ3位でACL出場の可能性が残るサンフレッチェでは。確かにそう感じさせるプレー内容だったような気がする。

 準決勝のアントラーズ戦の前には、アビスパサガンコンサドーレを破って決勝まで進出したヴァンフォーレ。一方、J2では18位に低迷。残り2試合で、もうJ3降格はないが、このところJ2では7連敗中。その前にも引分けが4つ続いており、天皇杯以外では8月以来勝利がない。対するサンフレッチェは残り2試合で優勝の目はなくなったが、3位。だが、4位セレッソとの勝ち点差は4で、ACL出場に向けてはけっして油断はできない。もちろん天皇杯で優勝すればJ1リーグの順位に関係なくACL出場が決まるわけだから、それなりのモチベーションはあったに違いないのだが。

 布陣は両チームとも3-4-3。ヴァンフォーレはトップに三平を置き、鳥海と長谷川の2シャドー。中盤は山田と石川のダブルボランチ。WBは右に関口、左に荒木翔。CBは右から須貝、浦上、エドゥアルド・マンシャ。GKは河田。正直、三平以外、知った顔はいない。しかも三平の頭がアフロ。どうやら今年6月位にアフロにしたようだが、これじゃ一人も知った顔がいない。一方、サンフレッチェドウグラスヴィエイラをトップに、満田と森島がシャドーに入る。中盤は野津田と河村のダブルボランチに、右WB森島、左WB柏。CBは右から塩谷、荒木隼人、佐々木翔。GKは大迫。けっこうベストメンバーを組んできた。

 ゲームは序盤からサンフレッチェが優勢。だが何となく余裕というか、気持ちの緩さを感じる。10分、右WB茶島がミドルシュートを放ったが、これがようやくこのゲームでの初シュート。一方、ヴァンフォーレからは失うものが何もない思い切りの良さを感じる。15分、右FW長谷川のドリブルから、左FW鳥海がミドルシュート。さらに右FW長谷川の縦パスを左FW鳥海が落とし、CF三平のポストからこぼれ球を右WB関口がスルーパス。右FW長谷川が抜け出し、シュートを放つ。GK大迫にセーブされたが、ヴァンフォーレの攻撃がイキイキとしている。

 そして26分、左サイドからのショートCKから戻ってきたボールを右FW長谷川が中へ流すと、ポケットに走り込んだ左WB荒木翔がクロス。CF三平がシュート。きれいに決まり、ヴァンフォーレが先制点を挙げた。これで面白くなった。31分、左WB荒木翔のFKを右CB須貝がヘディングシュート。34分には左FW鳥海がポケットに流し込んだパスに左WB荒木翔が走り込み、クロス。これは右WB茶島が帰ってきてクリアしたが、先制点と同じような形を作ってチャンスを演出。その後、サンフレッチェは満田と森島のポジションを入れ替え感激するが、前半はこのまま時間が経過。ヴァンフォーレの1点リードで折り返した。

 後半頭、サンフレッチェドウグラスヴィエイラと森島を下げて、CFベンカリファと右FWエゼキエウを投入する。3分、CH野津田のフィードにCFベンカリファが走り込み、CB須貝をかわしてシュート。後半はサンフレッチェが迫力をもって攻めていく。ヴァンフォーレも5分、CF三平の落としから右FW長谷川が左にドリブル。左WB荒木翔のクロスにCF三平が走り込むが、CB荒木隼人がクリアする。ナイススライディング。

 14分、CH野津田のFKは壁に当たる。16分、CFベンカリファがポストから反転してシュートを放つ。攻めるサンフレッチェ。一方、ヴァンフォーレも18分、三平と鳥海に代えて、CFウィリアン・リラと左FW松本凪生。さらに21分には荒木翔に代えて、右CB野澤を投入。須貝を左WBに上げて、守備を固める。一方、サンフレッチェも25分、茶島と柏を下げて、右WB野上、CH松本泰志。川村を左WBに上げ、満田とエゼキエウのポジションを入れ替えた。

 29分、CH石川の縦パスに抜け出したCFリラがミドルシュート。バーを叩いた。33分、CH野津田のミドルシュートは枠を越える。さらに34分、野津田を下げて、FWソティリウを投入。2トップにして、攻めていく。満田がボランチに下がる。そして39分、OHエゼキエウの仕掛けから中に流したパスに左WB川村が攻め上がり、強烈なシュート。これがネットに突き刺さる。ついにサンフレッチェが同点に追い付いた。

 しかし、エゼキエウがこのプレーで足を痛める。既に5人の選手交代を終え、代わりの選手を出すことができないサンフレッチェはエゼキエウを前線に残し、実質10人でのプレーを余儀なくされる。ソティリウをトップに、ベンカリファが左サイド。満田を右IHに置いて、松本のワンボランチ。塩谷を右WBに上げ、野上をCBに下げた。45+5分、右CB野上のポストから右WB塩谷が上がり、クロスに左IHベンカリファがヘディングシュート。だがポスト左に外れた。結局、後半もここで終了。1-1。勝負は延長戦にもつれ込んだ。

 サンフレッチェは延長戦頭、ケガのエゼキエウに代えて、右CB住吉を投入。野上を右WBに戻し、塩谷を何とFWに上げた。満田と松本泰志のダブルボランチ。2分、満田のFKがバーを叩く。その後も攻めるサンフレッチェ。10分には再びCH満田がミドルシュート。だがGK河田が横っ飛び、ナイスセーブ。ヴァンフォーレは11分、長谷川を下げて、右FWジェトゥリオを投入。サンフレッチェは15分、FWベンカリファから左に流して、左WB川村がシュート。だがポスト右に外れる。

 延長後半もサンフレッチェが攻める。3分、満田のFKはバーの上。7分、ヴァンフォーレは足の不調を訴えたCH山田とCB浦上に代えて、ヴァンフォーレ一筋、42歳の大ベテラン、山本英臣と左WBフォゲッチを投入。須貝をCBに戻す。9分、FWソティリウのポストから右WB野上が攻め上がり、クロスにFW塩谷がシュート。だがCB須貝がブロック。さらに攻めるサンフレッチェ。13分。CH満田の縦パスがブロックしようとしたCH山本の手に当たる。PK。これを満田が蹴るが、何とGK河田がナイスセーブ。ゴールを許さない。結局ゲームは120分でも決着がつかず、PK戦にもつれ込んだ。

 PK戦サンフレッチェが先行。ソティリウ、松本泰志、ベンカリファと決めれば、ヴァンフォーレもリラ、ジェトゥリオ、松本凪生と決める。サンフレッチェの4人目は左WB川村。貴重にして豪快な同点弾を決めた川村だったが、何とPK戦ではGK河田に止められる。ヴァンフォーレの4人目石川が決めて、サンフレッチェの5人目は満田。今度は決めた。そしてヴァンフォーレの5人目は山本英臣。交代出場したばかりの延長後半11分にはハンドでPKを与えたが、GK河田が止めてくれた。そしてそのGK河田がPK戦でもファインセーブでリードを作ってくれた。ここは絶対に決めないといけないところ。さぞかし強いプレッシャーを感じたかと思うが、さすがヴァンフォーレのレジェンド。山本が決めた。そして走りだす。J2ヴァンフォーレが優勝を決めた。

 この時期の天皇杯決勝ということで、ゲーム前は微妙な気持ちだったが、ゲームはなかなか充実した内容。J2で18位低迷のヴァンフォーレがJ1チームを次々と打ち破り、ついに優勝を飾った。レジェンド山本がPK戦の最後を決めるなど、実に感動的な優勝となった。来季、J2を戦いながらのACL参戦は相当な過密日程になって大変だろうが、これがヴァンフォーレ再起のきっかけになるといい。おめでとうヴァンフォーレ甲府に一足早い正月が来たようだ。