とんま天狗は雲の上

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人口と世界

 2021年8月から23年4月まで日本経済新聞に連載してきた記事を加筆・再構成したもの。日本だけでなく、中国もいよいよ人口減少を始め、世界人口も21世紀後半には減少局面になっていく。各国の人口動向と取り組まれている対策などを紹介し、また有識者へのインタビュー記事なども多く掲載する。しかし各記事は短く、あまりまとまっておらず、正直わかりにくい。

 少子化に係る様々な対策を整理すると、出生率向上のための家族支援や、労働力不足解消に向けた女性や高齢者就労への支援と労働力流動化の促進、そして移民促進策などか。いずれの政策においても、日本の取組はあまりに弱いし、保守派の抵抗も強い。

 だが、なぜ人口が減少してはいけないのだろうか。移民を積極的に迎え入れているカナダやオーストラリアなどの目的は経済の維持・成長だ。移民なら誰でもいいわけではなく、彼らが求めるのは技術能力を有する高度人材だ。各国の政策の中では、人口減を前提に、ロボット密度の増強や人とロボットの適材適所の模索を追及する動きもあるようだ。結局、求めているのは、経済の成長。いかにも日本経済新聞らしい。

 何も僕らが世界や日本の人口を心配する必要はない。日本や世界のために結婚したり、子供をつくったりする必要もない。あくまで自分たちの幸せを第一に考えればいい。その結果が少子化であるのは結局、日本国自体は国民の幸福の増進を第一には考えていないのだろう。人口が減る。それを前提に、社会の仕組み、国民が幸福になる方策を考えればいい。結局のところ、しがない一国民が世界人口について心配してもしょうがないなあと思った。

 

 

○「人口衰退期は今までの社会を支えた仕組みが限界に達したことを意味する。次の文明社会をデザインして乗り切るか、失敗し没落するかの分かれ目だ」/「歴史上、狩猟から農業に社会が移行したとき、世界人口は増えた。産業革命で生産量が飛躍的に拡大したときも人口増となった。次の文明システムに移行すると人口増加が始まるが、資源や環境の制約に直面したままでは増えない…これからは再生可能エネルギーや脱炭素をどう実現していくかが問われる。新しいエネルギー源を確立し、社会をどう組み立てるかが焦点になる」(P54)

○人手不足の解決策は4つしかない。働く女性を増やす、働く高齢者を増やす、日本で働く外国人を増やす、生産性を上げる。今の日本は総じて踏み込みが甘い。…経済協力開発機構OECD)の調査によると、金融など日本で自動化される可能性が高い仕事に就く労働者の割合は7%。パーソルは自動化が進めば30年までに298万人分の人材を捻出しうると分析している。だが労働市場の流動化が乏しいため、今のままではこうした人材が自動化困難な介護などの仕事にシフトする労働移動はなかなか進まないだろう。(P138)

性的少数者の国際支援組織ILGAによると、北欧や米英、ドイツなど多くの先進国が同性カップルの養子受け入れを認めている。日本は主要7か国(G7)で唯一、同性パートナーシップを認める国の制度がなく、特別養子縁組も婚姻関係のある男女に限られる。…米マサチューセッツ大学アマースト校のリー・バジェット氏らは。性的少数者を受け入れる社会を測る8段階の指標をつくり、132ヵ国を分類。1ポイント上がると1人あたり国内総生産GDP)が約2000ドル上昇する関係があったという。(P174)

○世界ではロボットや人工知能(AI)が人の雇用を奪う「技術的失業」が懸念されてきたが、主要国では絶対的な人手不足の方が課題となる。/ドイツはロボット活用やデジタル化で労働力人口の減少を補う産業政策「インダストリー4.0」と並行し、働く手の自動化関連のスキル習得支援で官民が連携する。追求するのは人とロボットの適材適所の理想形だ。/人口が減る未来のあるべき姿から逆算し、イノベーションを取り込めるか。変化を恐れない覚悟が試される。(P221)