とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

コロナ狂騒録☆

 「コロナ黙示録」は、新型コロナ感染の第1波が収束した2020年5月までを対象とする。本書はそれ以降、自民党の総裁選が始まった9月から東京五輪開催直前の2021年7月まで。この後、これまでにない規模の第5波が始まる。本書ではそれを予測する学者が登場するが、今はさらにその先、オミクロン株による第6波の真っ最中だ。

 「事実は小説よりも奇なり」というが、言ってみれば本書は、事実を人物の名前を変えて小説として書き現しただけ、とも言える。前著では、東城大における新型コロナ患者受入れと対応が焦点だったが、本書では、国産ワクチンの開発など多少、独自の展開もあるが、ほとんど現実にあったことばかりだ。

 いや、一つ、本書で筆がスベったことがある。それは浪速白虎党の凋落。残念ながら10月の衆議院選で維新の党は議席を大幅に増やし、第三党に進出した。菅元首相のヒットラー発言に対する噛み付き事件など、相変わらず無意味で無知性な対応を繰り返しているが、それでも国民の人気は治まらない。今、大阪は、本書で描いた以上の惨状に陥っているようだが、それでも維新の党は生き延びていくのだろうか。現実の世界でも、村雨元知事の登場を期待したところだ。

 海堂尊はその後も政府のコロナ対応への批判を続けているが、さらに本書の続編はあるのだろうか。政府もメディアも信じられない中、僕らは何を指針に行動し決断すればいいのか。ウクライナ情勢を見つつ、そんな気分がしてしょうがない。

 

 

○中国の情報をニュートラルに伝えるメディアが日本には乏しいから、実情が正確に伝わりにくいですね」…中国では…ワクチン接種は16才から59才の年代を最初にやり老人は後回しだそうだ」/「働き盛りの人たちを先に接種するのは合理的ですね。日本では、4500万人の65歳以上の老人の全接種を終えて、次に働き盛りの世代に接種するという計画を立てているみたいですけど、ナンセンスです。…「老人優先は、集票絡みだというウワサだね。(P100)

○旗を掲げたら国家は滅びる。だが国家は旗を掲げなければならない。ならば国家は、いずれは滅びる運命にある。そうであるならば国家たることを止めて、最初から純粋意志の集合体を目指せばよい。/あれから十年、社会は変化し、市民同士の間で、細分化された意思の疎通が可能になった。…そんな中で、コロナが襲来し、社会は新しい生活様式を模索している。/だが政治と国家は変化を頑なに拒絶し、従来の形式に固執している。/やはり国家というパラダイムはもう寿命かもしれない、と彦根は昔の考えを思い出す。(P105)

○「無責任な情報発信と、結果責任を取らない姿勢が『安保→酸ヶ湯マトリョーシカ政権』と浪速白虎党の『ナニワ・ガバナーズ』の共通点だ。『無責任に始まり無責任に終わる』政治家連中は、国民が政治家のやったことを忘れる、ということを前提としている。だがコロナは勝手が違う。…政治に阿る今の報道機関の姿は、太平洋戦争末期に大本営発表を垂れ流して国民を破滅させた、軍事政権下の御用メディアの姿と瓜二つだ。(P2-4)

○政治家と官僚は、自分たちを特権階級扱いし、身勝手な政策を決定し、信頼を落とした。/日本社会は官僚と政権、メディアが一体化し、正しく情報を伝えず国民を騙し、その力を削ぎ続けた。その結果、日本の国力は徐々に衰え、今や後進国に落ちぶれていた。(P243)

○高階センセが桜宮の医療を一人で背負って立つ必要なんて、ないんだからね。「責任は取れません」と宣言すれば済む話だよ。全力を尽くせばそれは「無責任」ではなくて「非責任」で、誠実な対応なんだから。…先は読めないが、医療のニーズがある限り、立ち向かわなければならない。/逃げることは許されない。できる範囲で地域医療への貢献を続けなくてはならない。/だが誰のために? そして何のために?(P296)