とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

町内会長日記(その7)

 「町内会長日記(その6)」から続く。

 前回の理事会の時、会計担当に「監事さんに監査の日程を確保したか」と聞いたら、この後、家に寄って帰ると言う。大丈夫かなとは思ったが、とりあえず理事会が無事終わってよかったとその後はのんびり過ごしていた。

 すると、その日の夜8時半近く、突然、会計担当から電話。「監事さんが『監査はできない』と言って埒が明かないので、今から一緒に行っていいですか」と言う。しばらくすると、二人してわが家にやってきて、着くなり、監事さんが喚きたてる。「どうしてもやれというなら、時間が必要なので、すぐに通帳など関連資料を渡してください」と言う。さすがにそんなことはできない。「4月1日にはすべて揃えるので、13時に集会所に来てほしい」と言うが、聞く耳を持たない。20分ばかりもうちの前で騒いでいたが、何とか4月1日の約束をして帰ってもらった。

 痴呆症なのか、精神的な病気でも抱えているのだろうか。いずれにせよ、あの状態ではまともな監査はできないだろう。ならば、前年度の理事長に代役で監査をお願いしようか。監事に事故ある場合の対応について、規約ではどうなっているだろうか。その夜はいろいろなことが頭を巡って、なかなか寝付かれなかった。

 調べると、役員が欠けた場合には、書面で過半数の合意があれば、次の役員を選任できることになっている。翌日、前理事長に代理監査を依頼したが、やはり固辞する。「規約上も規定がないのではないか」と言うので、規約を伝え、書面合意を得るつもりだと言って、何とか受諾してもらった。その後、監事さんにその旨を伝えようとご自宅に行ったが、ドアフォンを鳴らしても誰も出てこない。近くに住む役員さんに監事さんの家族事情等を尋ねたら、「病気ということはないと思うけど、耳は遠い。ご主人も娘さんもいるが、娘さんが朝早くに出勤していく」とのこと。そこで前理事長に監査を引き受けてもらったことを紙に綴り、郵便受けに投函しておいた。

 また、その午前中には中部電力ミライズのカスタマーセンターに電話した。お客さん番号を伝えたら、二本に分かれているそれぞれの請求額を教えてもらえた。これで3月分電気料金も確定し、決算報告を完成できる。ついでに、二つに分かれた支払いを一つにできないかと聞いたところ、「できますよ」との返事。なんだ。何かの都合で防犯灯が増設された時に、電気料金を一本で請求してもらうよう依頼をしていなかっただけだった。4月分以降は請求・支払いが1本化されることになった。その後は、書記担当から送られてきた理事会議事録と総会案内を修正し、総会議案書を完成。さらに監事交代のための書面決議の文面を作って、これらを書記さんに返し、確認してもらった。忙しい1日だったが、何とかやれることはやって、ホッとして眠った。

 すると翌朝、監事さんが突然やって来る。今度は一転、「ありがとうございます」から始まり、「3月下旬から、病気の家族の世話で、札幌へ行く必要があったので助かりました」と言う。なんだ、それなら最初にそれを言ってもらえばよかったのに。理由も言わずに「できない」一転張りだったので困ってしまった。そういうことなら「なぜ監事を交代するのか」と理由を聞かれた時にも答えやすい。もっともプライベートな内容ではあるので、回覧文書には単に「監事から辞任の申し出があった」としておいた。その後、庶務担当に前日に作成した資料を渡し、各戸配布の手配をしてもらう。やれやれ、一件落着。

 翌々日、庶務担当からコピーされた資料が届いたので、総会資料と防災備蓄品を配りに担当班の各住宅を回る。また、空き家のうちの一軒は東京在住のため、メールで資料を送付。しばらくしたら、無事、委任状が届いた。また市役所の保育課から、近くに新設された保育園の完成式典の出席を依頼する電話があったが、都合が悪かったので断った。ただし、見学会を行うと言うので、その案内はもらい、回覧をした。その後は監事専任の合意書や総会の委任状が届くのを待つばかり。少し早いかとも思ったが、前々週には理事長の引き継ぎ書を作成。引き継ぐ資料も確認して揃えておいた。

 総会の前週末までに合意書と委任状は概ね集まった。新監事専任の連絡は早めにしたかったので、最終的な数を確認する前に、過半数の合意が得られたとして回覧。それで最終週は暇かと思ったら、市役所から新年度に向けた通知文が次々に届く。木曜日に最後の回覧を回した。そして、総会の前日の土曜日。理事長の引継ぎ資料を大きなバスケットに入れて、集会所に持ち込む。会計担当と新監事さんも来てくれたので、さっそく、監査を実施。もっとも監査はほとんど会計担当に任せて、私は副理事長とともに、委任状や出欠票の数の確認をし、その後、机とイスを並べ、会場を作って翌日に備えた。

 家に帰り、シナリオに委任状の数などを書き込んで準備万端。あとは明日を迎えるのみ。と思ったら、夕方、会計担当から電話があり、3月初めにご主人を亡くされた方が感謝の手紙とともに、どら焼きを持ってこられたとのこと。総会後の理事会で配ることにする。どら焼きを配るのなら、お茶もあった方がいい。そこで少し早めに行って、他の理事さんにお茶の用意を頼んだ。ところが、他の理事よりも少し遅れてやってきた高齢の女性役員が「委任状を届けた際に『お茶の用意をしましょうか』と尋ねた時は断られたのに、結局、お茶の用意をするのですか。私は不愉快です」と言い出す。そんな! 「急遽、どら焼きが届いたので」と言い訳をするが、なかなか機嫌を直してもらえなかった。

 それでも総会は予定どおりに開始。冒頭に私から葬儀謝礼の手紙を読み上げ、あとはシナリオ通りに進んでいく。副理事長が活動報告、会計が決算報告を読み上げ、監事が監査報告をする。いつも総会で意見をする人がやっぱり手を挙げた。「繰越金が10万円もあるのはいかがなものか」と言うので「予算案に係る意見と見做す」と軽くいなして、採決。その人だけが反対をしたが、活動報告、決算報告ともに賛成多数で承認された。

 続いて、新役員の選任。こちらは全員賛成。昨年度はこのまま前理事長が議長を続け、かつ議案説明も自ら行ったが、今年は議長を新理事長に交代。ただし議案説明は私が行う。予想どおり、またいつもの人が質問をするが、一応、回答可能な質問だったので無事対応。採決も一人の反対を除いて、賛成多数で可決。新理事長がこれで審議を終わらせようとしたが、そこから意見を言い出す人が何人かいて、少しバタバタ。新理事長の意見を聞こうとするが「検討します」で乗り切った。その調子、その調子。1時間で無事終了した。

 総会終了後、新旧合同理事会を開催する。私から3月の理事会以降の活動記録と当面実施すべき事項をまとめたメモを配って説明。終了後にはそれぞれ担当ごとに引継ぎを行った。理事長引継ぎが最も時間がかかり、引継を終えた役員が先に三々五々帰っていった。12時半過ぎ、ようやく引継ぎも終った。その後、夕方に書記担当から総会議事録案が届いたので、一部修正。印刷後、副理事長のサインをもらい、新理事長に届けた。これですべて終了した。

 よかった。1年間、何とか終えることができた。最大の心残りは、最終日に高齢女性役員の機嫌を損ねたこと。ま、仕方ないか。8年後、また役員の順番が回ってきたら、今度はどの役職をやろうかな。理事長も悩みはあったが、けっこう楽しくもあった。ああ、これから少し寂しくなるなあ。