とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

なぜ気象学者は間違ったか☆

地球温暖化論争の疑問を追う」という副題が付いている。地球温暖化理論については、これまで疑問を呈する側の本を多く読んできた。たとえば、「『地球温暖化』神話」「気候変動の真実」などのように、IPCCの報告書には偽造があるとか、政治的思惑で決められているなどの反論がされてきた。また、「気候変動とエネルギー問題」では、太陽活動と地球上の雲による反射などを検討した論考もあった。

 本書はこれらの本にはない視点、「物理法則上、IPCC地球温暖化理論は間違っている」と主張するものである。ちなみに、筆者の小山新樹氏は、高卒で松下電器産業(株)に入社し、現在はクリーニング業を営む、市井の研究者である。しかしこうした経歴で判断してはいけない。顕熱と潜熱、湿球温度と乾球温度と凝結温度、そして、ボーエン比。これらのエネルギー伝達に係る初歩的な物理的理論に照らして、IPCCの主張する「大気温が上昇したため降水量が増えた」を否定する。また「温水効果ガスの増加(CO2)により大気温が上昇した」という主張も、エネルギー吸収率を考えれば、水蒸気でしかこの理論を支持できないとする。

 では、なにが地球温暖化の原因なのか? 筆者はそれを、海洋汚染だと見る。近年の日本近海の海水温上昇は、中国等による東シナ海の汚染や、韓国・日本の汚染も含めた対馬暖流による日本海の水温が、世界平均レベルの海水温上昇にとどまる沖縄や親潮流域に比べかなり高い水温を示すと言う。そして、第7章では今後の気候について予測する。その結果は、酷暑、台風の大型化、梅雨や秋雨豪雨の発生、短い春・秋、大雪というもので、結局、今の気候変動そのままだ。

 しかし、「あとがき」で指摘するように、「カーボンニュートラルの政策は全く意味をな」さず「膨大が負担と税金の無駄遣い」、「気候変動対策から人命や人々の生活を守るはずの温暖化対策が全く機能していない」(P129)ということだ。それにしても、文章はかなり稚拙で読みにくく、わかりにくい。たぶん編集者も執筆内容を十分理解できなかったのだろう。もう少しわかりやすく修正・編集してほしかった。これでは、多くの人の注目を集めるのは難しいかもしれない。本書の主張をどこかのマスコミや識者が再検証してもらえるとありがたいのだが。

 

 

○過去の環境汚染問題での対応の遅れから多くの犠牲者を出したその反省から、可能性があれば規制する、怪しきは罰する、といった姿勢に変化し、真偽の検証がなされず、言った者勝ちの様相が常態化している。/IPCCは真偽の論争の場ではなく多数決で決定される。つまり、科学の論争でなく政治力で決まるのだ(より多くの論文を出したグループの勝利となる)。(P13)

○物理法則を無視し統計的手法を重視すれば、気温が高くなれば降水量は増え、気候変動は大きくなるとの結論に至る。この考え方が気象学の主流である。/なぜ気温が原因で、結果が編めなのか?/気温が上がると雨が多くなることを証明した物理法則は存在しないのだ。/反対に、雨が降ると気温が上がる物理法則は存在する。潜熱、気化熱と呼ばれる現象である(P21)

○海洋汚染による海の砂漠化(海の実質の比熱が下がった)…海洋汚染による海水温の上昇が真の原因だった!/海水温が上がると海水の蒸発量が増える。/蒸発量が増えると低気圧が大きくなる。/低気圧が大きくなると…高気圧も大きくなる。/低気圧が大きくなると豪雨災害が多くなる。/高気圧が大きくなると干ばつ、水不足、山火事などの災害が多くなる。/蒸発量が増えると気温も上昇する。/これならば現状の気候変動とも一致する。(P55)

○「夏は南風が吹き気温が上がるため雨の日が多くなる。冬は北風が吹き気温が下がるため晴れの日が多くなる」。/これは、気象観測の事実を重視し、統計的相関性を基にした気象学者IPCCの主流的考えである。…気象観測の事実と物理法則の整合性を取った正しい解説は次のようになる。/夏は南の暖かい空気が…北上し気温が下がり湿度が上がるため、雨の日が多くなる。冬は北の冷たい空気が…南下し気温が上がり湿度が下がるため、晴れの日が多くなる。(P63)

○CO2が気温上昇の原因ならば、最も影響を受けるのは北海道で、最も影響の少ないのは沖縄となるはずが…現実は違う。温室効果ガスが原因の温暖化では説明がつかない。…現実の気象現象を無理のない理論で説明すれば、…日本の西方にある日本近海西方の海水温が影響するのである。…日本近海の海水温の変化と日本各地の気温の変化を論理矛盾なく説明できるのは、海洋汚染による海水面の上昇だけである。(P84)