とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

2022年、私が読んだ本ベスト10

 今年読んだ本は51冊。都市・建築系の本を11冊読んでいるので、週1冊強のペースか。退職し、妻の介護と家事をする日々の中で、1日のペースも決まってきた。その中で、なかなかまとまって本を読む時間がない。最近は布団脇にスタンドを置き、寝ながら本を読む。眠れない夜、早く目が覚めた時。

 今年は安部元首相の狙撃事件やウクライナ紛争など、大きな事件が多かった。アメリカによる覇権体制も陰りが見え始めたとはいうものの、依然、自民党政権は続いているし、世界もどうなるかわからない。来年は大きな動きがあるだろうか。できれば何もない平穏な年であってほしい。そして静かに読書を楽しみたい。

 

[第1位]クララとお日さま (カズオ・イシグロ 早川書房

 今年の1位は何といっても、カズオ・イシグロの最新作。とは言っても、もう発行されて1年以上経つ。お日さまのように人々の心を明るく照らし、暖めてほしい。硬くなった人々の心を柔らかく溶かしてほしい。

 

[第2位]太陽諸島 (多和田葉子 講談社

 第2位は多和田葉子の「太陽諸島」。3部作の完結編だ。でも、Hirukoたち一行も、ロシアに行く手を阻まれて、日本には辿り着けなかった。国境なんていらない。太陽は人々の頑なな心を溶かしてくれるだろうか。

 

[第3位]クソったれ資本主義が倒れたあとの、もう一つの世界 (ヤニス・バルファキス 講談社

 ギリシャの国会議員にして経済学者にして、SF作家? コーポ・サンディカリズムが小説の形でうまく説明されている。「分岐点は私たちの毎日の生活のなかにある。毎日毎日、私たちは歴史の流れを変える機会を活かし損なっている」という言葉は重い。

 

[第4位]死刑について (平野啓一郎 岩波書店

 なぜ死刑に反対するのかを丁寧に説明する。日本で死刑存続の可否が議論の俎上にも上らないのは、人権教育の失敗であり、格差の拡大と自己責任論が影響している。死刑は被害者の遺族も含め、誰の心も幸せにはしない。死刑のない社会こそ豊かだろう。

 

[第5位]地方メディアの逆襲 (松本創 ちくま新書

 秋田魁新報毎日放送東海テレビなど、地方メディアでドキュメンタリーなどを担当する記者らを取材し、紹介する。全国メディアから配信されるニュースの真実性がますます信頼を失う中で、彼らのがんばりこそが求められている。

 

[第6位]タリバン 復権の真実 (中田考 ベスト新書)

 先頃、タリバン政権が、女性の大学教育停止を決定したというニュースが流れた。イスラム原理主義による政治はいかなる国家を作るのか。欧米はあくまで対立の姿勢を崩さない。今、民主主義の正しさこそが問われているのかもしれない。

 

[第7位]経済学の堕落を撃つ (中山智香子 講談社現代新書

 オーストリア学派とドイツ歴史学派の対立から始めて、現在に至るまでの経済学の歴史を語る。現在の「右肩上がりの進歩」を自明とする市場的自由主義経済から、ポランニーが主張した「正義・公正」を核にした経済学が主流となる日は来るだろうか。

 

[第8位]気候変動の真実 (スティーブン・クーニン 日経BP

 地球温暖化対策を積極的に推進した民主政権下で科学担当次官を務めた気候学の権威が、気候変動論への疑問を語る。未解明なことが多過ぎる。科学者として、もっと科学に対して真摯であることを求める。そして政治家やNPOにも自省を求める。

 

[第9位]DO YOU SPEAK FOOTBALL? 世界のフットボール表現事典 (トム・ウィリアムズ イースト・プレス

 面白い。日本独自の表現などあるだろうかと思ったが、「水を運ぶ人」や「司令塔」など意外に多くあった。マラドーナの「神の手」も取り上げられている。次に本書が編まれる時には「神の子」も一項目として取り上げられるだろう。もちろんメッシのことだ。

 

[第10位]平成史 (與那覇潤 文藝春秋

 久し振りに與那覇潤の本を読んだ。平成30年間を概ね10年ずつの3部に分けて、批評していく。この若い歴史家には令和以降の歴史はどう映っているのだろうか。混迷の度はますます深まっていっている。

 

 来年もいい本に多く巡り合えますように。