今年読んだのは54冊。昨年より少し多いが、都市・建築系の本も含めて65冊はほぼ週1冊のペース。まあそんなもんか。でも例年よりも面白い本が多かった印象。そうでもないかな。まあ来年もボチボチと本を読んでいこう。
[第1位]リスペクト―R-E-S-P-E-C-T (ブレイディみかこ 筑摩書房)
今年、最も興奮し、面白く読んだのがこれ! 私の専門分野に関係するテーマだったということもあるが、社会に対してしっかりと異議申し立てをする姿勢はすばらしい。学生たちにも紹介したが、果たして読んでくれた人はいるだろうか。
[第2位]資本主義の次に来る世界 (ジェイソン・ヒッケル 東洋経済新報社)
資本主義の終焉が言われ始めたここ数年。次に来るのはどんな世界か。本書の筆者はアフリカのエスワティ出身。資本主義ももちろんだが、民主主義も環境問題もすべて西洋発の思想だが、いよいよ世界が西洋支配から脱する時代が近付いてきたか。期待したい。
オノマトペや幼児の言語習得を通じて、言語の本質に迫っていく。ソシュールなど言語学の先達に対する謙虚な姿勢も好ましい。
今年は泉房穂が大きくブレークした年だった。私はもっぱらXで泉氏の言動を追うばかりだったが、ジャーナリストの鮫島浩との対談という形を取りつつ、様々な政治的課題について論じていく。裏金問題で自民党も揺れている。来年こそ日本の政治が動くことを期待したい。
[第5位]国籍と遺書、兄への手紙 (安田菜津紀 ヘウレーカ)
自死した父、そして兄。人には必ずルーツがある。しかしそこにどんな意味があるのだろうか。筆者は今、ガザでの虐殺をXで頻繁に伝えている。ルーツが問題にならない社会、世界になってほしい。
筆者の大伯父にして海軍軍人で、天文観測を仕事とした秋吉利雄の人生を描く。戦前から戦中、そして戦後まで、暗い世相の中で何とか生きていこうとする人々の人生を思う。こんな時代になってはいけない、と今、思う。
スピノザを読むのは初めてだが、國分功一郎の説明はわかりやすい。次の時代の思想はスピノザを基礎にして進めばいいのかもしれない。
これまでも外来種駆除を批判する本は何冊も読んだが、これが一番わかりやすかった。外来種も在来種も、与えられた環境で必死に生きている点では何ら変わりがない。
[第9位]コソボ 苦闘する親米国家 (木村元彦 集英社インターナショナル)
ウクライナ紛争、そしてガザ紛争。今年は悲惨な戦争のニュースが多くあり、気分が滅入る。だが紛争があるのはこれだけではない。ナゴルノカラバフを巡る係争は一段落したようだが、アルバニアやコソボなどバルカン半島を巡る係争は依然、燻り続けている。そしてこれらの紛争の裏には必ずアメリカの存在がある。アメリカの罪悪について指摘する声がもっと大きくなっていい。
[第10位]地方に生きる (小松理虔 ちくまプリマ―新書)
小名浜で活動する小松理虔という存在を知ることができた。当事者でなく「共事者」という主張も興味深い。
他に、☆を付けたのは5冊。
「ゼロからの『資本論』」(斎藤幸平 NHK出版新書)
「一億三千万人のための『論語』教室」(高橋源一郎 河出新書)
☆を付けた理由はそれぞれだけど、今年もいい本にたくさん巡り合えた。来年も面白い本をたくさん読みたいものだ。