とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

読書

行動経済学の使い方

これまで大竹文雄の本は何冊か読んできて、わかりやすく面白いので、本書も期待して手に取った。行動経済学に関する本書では、第1章「行動経済学の基礎知識」で、プロスペクト理論や現在バイアス、社会的選好やヒューリスティックといった基本的な理論につい…

昼の家、夜の家☆

オルガ・トカルチュクは昨年発表された2018年のノーベル文学賞を受賞したポーランドの作家。邦訳された作品はまだ少ないが、その一つ、「昼の家、夜の家」を読了した。 ポーランドの南西部、チェコとの国境付近にある人口2万5千人ほどの小さな町ノヴァ・ルダ…

沈黙する知性

内田樹と平川克美の対談集である。この二人が小学校以来の同級生ということは周知の事実。同じ波長の二人がまさに異口同音で話をする。どちらかと言えば、平川氏が最初に話を始め、内田氏が「それはこういうことでしょ」と解説をする感じ。多少の意見の違い…

日本国の正体

「○○の正体」というタイトルは、孫崎亨が始めたものだっただろうか。「日米同盟の正体」、「戦後史の正体」で戦後の日米関係を暴露して話題を呼んだ孫崎氏が新たに「○○の正体」シリーズを発行した。今度は「日本国の正体」。いったいどんな日本国の真実が暴…

「地球温暖化」の不都合な真実

先に「『地球温暖化』狂騒曲」を読んだが、本書はその著者である渡辺正氏が訳した本。「『地球温暖化』狂騒曲」の約1年後に発行されているが、原著の発行は2018年だから、渡辺氏は本書を訳しつつ、その知見を取り入れて前著を書いたのだろう。内容的に重複す…

死刑囚メグミ

石井光太の書いた小説はこれで4作目。本作品は貧困から覚醒剤の運び屋となり、マレーシアで死刑囚となった女性・メグミと彼女を救うために奔走する新聞記者らを描く。幼少期に父親を亡くし、准看護師となるも劇団員に騙されて借金を負うことになり、その返済…

俺たちはどう生きるのか

「悪い人間なんていないよ。人間は悪いことをするときがあるんだ」。ずいぶん前に大竹まことが言った言葉を今も強く覚えている。このことを書いた「法令順守よりも組織の問題」は11年も前の記事だから、もう20年近く前のことか。図書館で大竹まことの書いた…

約束された移動

短編が6編。表題の「約束された移動」は、ロイヤルスイートの担当となったホテルの清掃員と宿泊者ではあってもけっして会うことはないハリウッド俳優との交流。「ダイアナとバーバラ」は、手作りしたダイアナ妃の衣装を着て孫娘とデパートへ通う祖母の話。「…

生きづらさについて考える

昨年8月に発行された内田樹のコラム集。「サンデー毎日」を始めとする様々なメディアやブログに書いてきたコラムを40編近く収録している。多くは安倍政権批判。そして教育行政等に対する批判。だが、それは単に現政権や政策の間違いを指摘するのではなく、な…

忘れられた巨人

「カズオ・イシグロの視線」を読んで、本書を読み直そうと思ったのだったか? 一度は単行本(「忘れられた巨人」)を図書館から借りて読んだが、文庫版が出た際に購入しておいた。改めて読んでみると、雌竜クリエグの息は確かに私の脳を覆っていたようだ。最…

小箱

幼稚園で生活する私。そこは、調理室の調理器具を除いて全てのものが小さい。冒頭、カマキリをキャラメルのおまけの箱に閉じ込めるシーンが描かれる。子どもの頃の思い出。しかし幼稚園は閉鎖されて久しい。この町には子どもがいない。産院も爆破された。死…

2019年、私の読んだ本ベスト10

今年読んだ本は都市・建築関係の専門書も入れると91冊。このブログで紹介したのは72冊。週2冊は無理だけど、まずまず読んだんじゃないかな。正直、最近は読みたいと思うような本が減った。書店に行くと、ヘイト本やくだらないタレント本などが平置きされてい…

宝島☆

今年1月に発表された第160回直木賞受賞作品。図書館に予約し、ようやく順番が回ってきた。沖縄の戦後を舞台にした小説だということは知っていたが、ここまで壮大な作品だとは。将来に語り継げられる作品。沖縄の歴史を知るためにも、読んでおくべき本だ。 戦…

「地球温暖化」狂騒曲

今年は環境活動家少女、グレタ・トゥーンベリの登場により、「地球温暖化」に係るプロパガンダに拍車がかかった感がある。しかし私は一貫として「地球温暖化」論を疑っている。7年ほど前に読んだ渡辺正氏の著書「『地球温暖化』神話」は、地球温暖化に係る様…

楽しい終末

「科学する心」を読んで、本書も読みたいと思ったのだろうか。25年以上も前の1993年に発行された本だが、書かれていることにほとんど古さは感じない。核の暴走、中でも原子力発電所の暴走による終末を書く「核と暮らし日々」を読むと、福島原発を予知してい…

氷獄☆

いよいよ桜宮サーガが再開した。3編の短編と1編の中編が収められているが、いずれも舞台は東城大附属病院。そしてあの田口医師や白鳥技官も登場する。 1作目の「双生」は碧翠院の桜宮小百合とすみれの二人が医師になりたての頃、田口先生のもとで研修をして…

変わったタイプ

「変わったタイプ」というタイトルからは「変人」が多く登場するのかと思ったが、そうではなく、「タイプライター」。もっとも英語の「タイプ」には、書体や型といった意味もあるから、それらを含めてのタイトルだろう。 とにかく、あのトム・ハンクスが書い…

フットボール批評 issue26

今号の特集は「今、一番面白いフットボールの正体」。仲川輝人やマルコス・ジュニオールなど横浜F.マリノスに関わる人々へのインタビュー記事などが多く掲載されているのだが、目次に続く特集の冒頭は以下のような文章で始まる。 ○風間八宏が名古屋グランパ…

「誰でもない者」。そういう存在の生物が世界には十数人はいる、という設定。だから「某」。主人公は最初、丹羽ハルカとして現れた。女子高生として。次いで、同じ高校の男子生徒である野田春眠になった。そして同じ学校の事務員である山中文夫になる。さら…

戦争の記憶

日韓関係が依然、回復していかない。韓国からのアプローチはあるようだが、日本政府の対応が硬直的だ。あいちトリエンナーレの「表現の不自由展・その後」に対する政府の対応も、歴史問題に対して硬直的な姿勢を感じる。何に対して硬直的なのか。「歴史」に…

80年代音楽解体新書

BS12トゥエルビ「ザ・カセットテープ・ミュージック」は最近お気に入りの音楽番組で、毎週欠かさず観ている。その出演者、音楽評論家のスージー鈴木の本は、マイナーなのか、市の図書館に所蔵されていない。先に読んだその内容を本にした「カセットテープ少…

資本主義に出口はあるか☆

タイトルだけ見ると、経済学の本かと思う。しかし荒谷大輔は哲学者。哲学的観点から「この社会」を見つめ直し、「新たな社会」への展望を示す。その意味では「資本主義に出口はあるか」というタイトルは偽りではないが、「新たな社会」の展望はまだ具体性に…

いまどきの死体

法医学者として、日々、多くの遺体の解剖を行っている筆者が、解剖を通じて見えてくる、現代日本の課題や死者それぞれの人生などを具体的に綴っている。ホテルのベッドの上でエコノミークラス症候群により亡くなった女性。交通事故によるハンドル損傷で、三…

官邸官僚

安倍一強体制がいつまでも続いている背景には、今井尚哉首相秘書官ら官邸官僚の存在がある。文藝春秋の連載で続けてきた取材をもとに、彼ら官邸官僚の実態や経歴と現状などをまとめている。取り上げられる官邸官僚は、今井尚哉首相秘書官兼首相補佐官の他に…

子どもの頃から哲学者☆

面白い! こんなに楽しく、そして分かりやすい哲学の本は初めてだ。いつも行く図書館ではなぜかジュニア・コーナーに置いてあったけど、これは絶対、大人が読むべき本だ。そして今、人生に悩んでいる人や哲学に興味がある人に読んでほしい。面白く、でも絶対…

Newton別冊『死とは何か』

ベストセラーになっている「『死』とは何か」とは別の本。ニュートンが別冊で「死とは何か」について特集した。内容はニュートンらしく、ほぼ全編、医学的・生物学的観点から老化や死に関する知見を紹介したもの。だが、心停止、植物状態、閉じこめ症候群、…

すばらしい新世界

「一九八四年」と並ぶディストピア小説の歴史的名作と言われるが、発行はなんと1932年。今から90年近くも前にこんな作品が書かれていたとは、すごい。まずはそのことに驚いた。 読んでみると、内容は「一九八四年」とまったく違っている。「一九八四年」は情…

愛☆

「愛」とは何か? てっきり私は、キリスト教の愛=アガペーについての本だと思っていた。しかし、「キリスト教の『愛』は……極度に理想理念化された、彼岸的な愛の概念」(P40)であり、「義務」としての愛は“真の愛”とは違うとバッサリ切り捨てる。では“真の愛…

いちから聞きたい放射線のほんとう☆

この本をどこで知ったのだったか。池澤夏樹の「科学する心」かな? 福島原発事故から3年後、2014年発行だから、世間では放射線騒ぎもひと段落し始めた頃。しかし事故当時の情報の嵐の中で、これまで聞いたことがなかったシーベルトやベクレルといった言葉が…

人口減少社会のデザイン

イントロダクションで、広井教授を中心とする研究グループが公表した「AIを活用した日本社会の持続可能性と政策提言」に関する研究成果が紹介されている。 私はてっきり、本論でその内容を説明していくのだとばかり思って読み進めていった。第1章「人口減少…