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とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

不時着する流星たち

グレン・グールド、エリザベス・テーラー、牧野富太郎・・・。10の人物・事物などにインスピレーションを受けた10の短編小説が収められている。10の内訳は、名も知らぬ作家もいれば、バルセロナ五輪男子アメリカバレーボールチーム、さらには「世界最長のホ…

毎日同じ服を着るのがおしゃれな時代

タイトルでは何を言いたいのかわからない。これは「消費行動の変化」という章の中にある節の見出しだけど、目次を開けば、もっと魅力的な見出しが多く載っている。「自己関与性」とか、「おあさがりからおあがりへ」とか、「派・族・系」とか、「3人の高齢者…

砂漠の影絵

「蛍の森」に続く石井光太2作目の小説。前作はハンセン病患者の隔離と苦しみを描いた秀作だったが、今度の作品は、中東の武装集団による人質事件を描く。そこに描かれているのは、人質の命よりもアメリカのご機嫌を伺い、自己責任の言葉で被害者を批判する日…

統治新論

本書が発行されたのは2015年1月。この対談で大竹弘二に触発されて、國分功一郎は「近代政治哲学」を執筆したのか。もちろんそれ以前から政治哲学に対する関心はあったのだろうが・・・。 最初は特定秘密保護法を巡る議論から。そして「解釈改憲」や「集団的…

政府はもう嘘をつけない

昨年7月に発行された本である。図書館に予約をしていたが、なかなか入荷しなかった。第5刷が12月に刷り上り、ようやく我が春日井図書館にも蔵書されることとなった。「政府は必ず嘘をつく 増補版」の続編。というわけではなく、筆者が追っている強欲資本主義…

知らないと大変! 定年後のお金の知識

先日、会社で定年退職者向けのセミナーがあった。退職金や医療保険、年金など粗方のことは教えてもらえたが、念のため、本書も図書館で予約して読んでみた。こちらの方が一般的なことが書かれているので、対象は広い。 男性は年金支給が経年的に遅れていくの…

パウロ

キリスト教は一説にはパウロ教とも言われる。新約聖書は四福音書と使徒等が書いたいくつもの文書で構成されるが、その中でも多くを占めるのはパウロが書いたとされる書簡である。本書では実際にパウロが書いたのは「テサロニケ人への第一の手紙」を始めとす…

近代政治哲学

ずいぶん前に購入してあったが、なかなか読み始める気が起きなかった。何よりタイトルが堅い。パラパラと開くと、スピノザやルソー、カントらの名前が書かれている。これはいかにも難しそうだ。しかし読み始めてみると、何と、とても読みやすい。あっという…

モテる構造

モテたいから本書を読み始めたわけではない。副題は「男と女の社会学」。山田昌弘が最近はどんな研究をしているのかという興味も本書を読み始めた理由の一つだ。 そもそも昔から男女の違いについては関心があった。それは自分自身が男性の中で生きづらさを感…

紋切型社会

先日読んだ「芸能人寛容論」は面白かった。その前に出た本書をさっそく予約した。「紋切型社会」というタイトルの意味は少しわかりにくい。「育ててくれて、ありがとう」とか「逆にこちらが励まされました」とか言って、わかった気になってるなよ。本当に「…

サッカー監督図鑑

文字どおり「図鑑」。世界176人の監督を網羅的に紹介する。順番は国名順。最も多いのはスペインの22人、ついでイタリアの21人。その次に多いのが、ドイツ、オランダ、ポルトガルの14人だが、若手が魅力的なのはポルトガル。モウリーニョが代表格だが、ビラス…

「戦後」はいかに語られるか

戦後70年は一昨年、あっという間に過ぎ去った。「戦後○年」という言い方はいつまで続くんだろう。戦後○年という言い方が永久に続くのならば、明治維新後○年という言い方だって使われ続けてもいいはずだ。そう考えれば、「戦後○年」という表現には賞味期限が…

芸能人寛容論

数ヶ月前に新聞の書評で読んで、面白そうだと予約した。その書評にどんなことが書かれていたか、今は覚えていない。必ずしも気楽なタレント本とだけ思っていたわけではない。でも気楽さも求めていた。そしてそんな中途半端な期待に応えてくれる。小難しい社…

げんきな日本論

天皇の生前退位については、2019年から新元号にするなどの話題が湧き上がっている。そうした報道を見るたびに妻が「天皇制なんて廃止すればいいのに」とつぶやく。そんな危険思想(笑)は家庭内に留めることにするが、なぜ日本には天皇がいて、現代まで続い…

2016年、私の読んだ本ベスト10

今年読んだ本は70冊。昨年の75冊からまた減ってしまった。どうしてだろう。やはり白内障の影響で本が見にくいのかな。都市・建築関係の本は14冊。こちらは昨年とあまり変わらないが、実は購入しただけでまだ読んでいない本が数冊ある。それから今年は「フッ…

徳は孤ならず

「徳は孤ならず」は論語の一節。徳ある人はけっして周りが放っておかないといった程の意味。今西和男のことである。現在の日本サッカーの隆盛にあたっては、一般的にはJリーグを創設した川淵三郎が有名だろうが、そしてもちろん川淵が果たした役割をけっして…

ことばの地理学

「方言」の話である。「言語地理学」という学問分野があるそうだ。現在の言語地理学は1969年に柴田武氏が執筆した「言語地理学の方法」が元となっているが、新たな言語地理学は「ことばの地理的側面、すなわち、方言分布を対象とする研究を広く言語地理学と…

問題は英国ではない、EUなのだ

今や、日本で引っ張り凧のエマニュエル・トッド氏。本書はタイトルからして英国EU離脱の国民投票の評価と影響を分析する内容かと思ったら、これは釣りタイトル。EU離脱決定後に取材されたインタビュー記事もあるが、それ以外の4本はそれ以前に行われたインタ…

ヌメロ・ゼロ

ウンベルト・エーコの最後の小説。5月に「プラハの墓地」を読んだばかりというのに、また新作を読めて喜んでいいのか、悲しんでいいのか。最後の小説ゆえか、歳のせいか、これまでの小説に較べればいくらか中篇で、内容的にもそれほど複雑で込み入った内容で…

羊と鋼の森

2016年の本屋大賞第1位になってすぐに予約をしたけれど、半年以上も待ってしまった。「羊」とはピアノのハンマーの巻かれたフェルト、鋼とはピアノの弦。ピアノのハンマーと弦が森の木々にように数多く並んでピアノはできている。羊と鋼が出会って響かせる音…

プレミアリーグ観戦レシピ

粕谷秀樹と言えば、プレミアリーグの解説でおなじみだが、本を出すのは初めてだと言う。そうだったのか。でも楽しい。今シーズンのプレミアリーグは下記にも引用したように、一流の名監督が一堂に集結した。いないのはアトレティコのシメオネくらい? そして…

笑える日本語辞典

「笑える国語辞典」というサイトがある。そこから特に「笑える」項目などを選りすぐって掲載したものである。冒頭に、 ○私たちが日常使っている言葉は、辞書に載っている意味ではとらえきれない複雑なニュアンスを含んでいます。特に日本語は、相手のホンエ…

橋を架ける者たち

在日差別に抗してサッカーを続け、サッカーを通してレイシズムに抗してきた人々を紹介するドキュメント。取り上げられるのは、安英学(アン・ヨンハ)、梁勇基(リャン・ヨンギ)、鄭大世(チョン・テセ)。そして1954年、一度だけ東京朝高が全国高校サッカ…

その白内障手術、待った!

右目が白内障と言われている。数年前から読書の際に文字が二重になったりして見難かったので、近くの眼科へ行ったところ、そう言われた。最初は「すぐ手術をしますか?」と聞かれたけれど、妻とも相談し、もう少し様子を見ることにした。その後、仕事が忙し…

ドイツ人が見たフクシマ

タイトルから、ドイツでは福島原発の事故がどのように捉えられているのかを語る本だと思った。もちろんそこから始まるのだが、本書はその後ドイツが選択した脱原子力というエネルギー政策について解説するものである。福島原発後の2011年8月6日に、原子力法…

喪失の戦後史

平川克美が戦前から現在までの歴史と日本人の意識の変化を語るというので興味を持って読み始めた。元は「ラジオデイズ」で開催された全6回の講演記録ということで、話し言葉で書かれているために、非常に流暢に流れていくし、また長々と余談が語られる部分も…

地方創生の罠

国の地方創生が掛け声だけで大した成果も上げていないこと。また旧態依然の成長・活性化策はいまやまったく意味がないこと。むしろ「いかにうまく衰退していくか」が課題だという筆者の認識には大いに賛同する。第1章・第2章の「ゆるキャラ」「B級グルメ」批…

急いてはいけない

イビチャ・オシムという名前を見ると思わず立ち止まって何が書かれているか、何を話しているか、注目してしまう。本書は、フランス語に堪能でフランスのサッカーをよく知る田村修一氏がオシム氏にインタビューを行った内容を披露したもので、冒頭にオシムと…

現代の地政学

地政学とは何だろう? 今後の政治状況を地理や歴史を頼りに見通すことだろうか? 本書では第5章でこのような認識で書かれた舟橋洋一の「21世紀 地政学入門」を徹底的に批判する。そして地政学の基本は地理であり、ついで人種や宗教も重要な要因だと言う。し…

チェ・ゲバラの遥かな旅

海堂尊の「ポーラースター」、伊高浩昭の「チェ・ゲバラ」に続いて、戸井十月の「チェ・ゲバラの遥かな旅」を読んだ。読む順番としては逆かもしれないが、次第にチェ・ゲバラの実像に近づいていくような気がする。伊高浩昭の「チェ・ゲバラ」の方が正確かも…

イエスの幼子時代

タイトルに惹き付けられて借りた。ボブ・ディランのノーベル賞受賞には驚いたが、クッツェーも南アフリカ出身の2005年ノーベル賞作家だ。読み始める前はてっきり、本当にイエスの幼児時代を描いた作品だとばかり思っていた。でも全く違う。 少年ダビードはイ…

オリエント世界はなぜ崩壊したか

昨今、「イスラム国」など中東を中心とするニュースを聞く機会が多くなっている。そして筆者である宮田律氏をテレビで拝見することも多い。本書は紀元前3000年のエジプト文明、メソポタミア文明の時代から、アッシリア、ペルシャ、オスマン帝国などを経て現…

人口と日本経済

人口減は当然ながらGDPを引き下げる。そう思っていた。確かにそういう面はある。しかし経済とは必ずしも人口と連動するわけではない。本書は「人口減少時代における日本経済の未来を予測する」類の本ではなく、人口の推移を念頭に置きつつ、人口の影響はある…

ポスト西洋世界はどこに向かうのか

第1章で、「西洋独特の政治秩序」について「その主な特徴は自由民主主義、産業資本主義、世俗ナショナリズムの三つである」(P8)という記述がある。これまで西欧世界は、この三つで構成される民主主義こそ社会をより良いものに導くと信じ、西洋以外の諸国に対…

このあたりの人たち

まあ荒唐無稽な話である。荒唐無稽な「このあたりの人たち」の話が26話も詰まっている。町の人たちは、ある日突然、いなくなったり、復活したり、病気になったり、噂話をしたり、まあとんでもないことが普通に起きて、そして普通に元に戻る。そもそもそれが…

チェ・ゲバラ

海堂尊の「ポーラースター」を読んで、チェ・ゲバラの本当の姿、生き方を知りたくなった。さっそく戸井十月の「チェ・ゲバラの遥かな旅」と三好徹の「チェ・ゲバラ伝 増補版」を買ったが、それらを読む前に図書館で予約した本書が届いた。昨年7月に刊行され…

ホセ・ムヒカ 世界でいちばん貧しい大統領

ウルグアイの元大統領ホセ・ムヒカについては、「世界でいちばん貧しい大統領のスピーチ」という絵本を読み、その内容に深く感動した。もちろんこれは私だけではなく、そのスピーチは世界の多くの人々を惹きつけ、多くの感動を呼んだ。だが絵本に登場するム…

政府は必ず嘘をつく 増補版

7月の「政府はもう嘘をつけない」の出版前に、2012年に発行された「政府は必ず嘘をつく」の増補版が出版された。2012年版を読んでいないので、まずは増補版から読み始めた。2012年版が発行された時は、フクシマ原発事故の後、放射線量や風評被害など、様々な…

サッカー通訳戦記

日本のサッカー界で通訳を務める10人のインタビュー集。トルシエの通訳をしたフローラン・ダバディ氏やジェフユナイテッド千葉でオシムの通訳を務めた間瀬秀一氏、ジーコの通訳を担当した鈴木國弘氏などよく知られた人たちから、元フットサル日本代表監督の…

ポーラースター

最初、極北シリーズの新しい作品かと思ったが、チェ・ゲバラを主人公にした4部作の1作目だという。チェ・ゲバラの名前とキューバ革命をカストロと共に達成した革命家ということだけは知っていたが、その略歴等はまったく知らなかった。そもそもアルゼンチン…

忘れられた日本の村

ここで紹介されるのは7つの小さな山村・漁村である。戦後しばらく間で水晶を採掘していたと思われる島根県安来市の上小竹、玉山という集落。マタギが住んでいたという秋田県北秋田市阿仁では、アイヌ由来の言葉を探す。兵庫県新温泉町三尾では断崖に囲まれて…

色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年

昨冬に文庫版が出たので愛蔵用として購入した。長らく読まずに置いていたが、お盆休みに時間があったので、久し振りに読み返した。前に読んだときには「ノルウェイの森に通じる心を打つ恋愛モノ」という評価だったが、今回も基本的な印象は変わらない。しか…

台所のラジオ

吉田篤弘は「クラフト・エヴィング商會」の一人として活動するとともに、いくつかの小説を発表している。前に「パロール・ジュレと魔法の冒険」を読んだが、長編で少ししんどいなとそれ以来やや敬遠していた。久し振りに吉田篤弘の名前を見て、今度はどんな…

フリーメイスン

フリーメイスンについて最近は東京タワー近くの日本ロッジが紹介されたり、1ドル紙幣の記号やグラバー邸の文様など、かなり身近な存在として認識されるようになってきた。しかし依然、多くの秘密性を帯び、よくわからない存在であることは変わらない。そんな…

フットボール批評issue12

フットボール批評が1620円に値上がりした。1242円からだから、実に378円のアップ。代わりに32ページ増というのだが、値上げ分の価値ある内容だろうか。たまたま年間購読が前号で切れて今号の自動配送がなかったこともあり、しばらく最新号が発行されているこ…

内田樹の生存戦略

久しぶりに内田樹を読んだ。「GQ」に連載している人生相談を2012年から2016年春まで、全部で67問。「人をほめるときの基準」や「ネットの普及が雑誌衰退の原因か」など、内容はかなり千差万別。でもいつもの内田節でバッサバッサと回答していく。 連載の最初…

サッカー右翼 サッカー左翼

「左翼のサッカーと右翼のサッカーがある」。これは元アルゼンチン代表監督のメノッティの言葉だそうだが、それに誘発されて、様々な監督が指揮するサッカーを右翼と左翼に分けて批評する。 右翼の一番手は何といってもアトレチコ・マドリーのディエゴ・シメ…

海図なき航海

中部経済新聞の最終面に中部経済界の経営者等が自らの半生を綴る「マイウェイ」というコラム欄がある。内田橋住宅株式会社の馬場社長が還暦を期してこの欄に連載したコラムが2013年に中部経済新聞社から新書版で発行されていた。先日、ふとした機会に本書を…

京都ぎらい

筆者の井上章一は建築史・建築論の専門家として注目しているし、「現代の建築家」などこれまでもその著作を読んできた。井上氏の方がやや先輩だが、同じ京都で建築を学んだ者として、「京都ぎらい」という気持ちはよくわかる。学生時代から抱いていた気持ち…

大きな鳥にさらわれないように

人類が滅亡への道を辿り、人工知能とクローン技術により新たな人類(のような人々)が生きている超未来を舞台としたSF小説。14の短い小説が集まり、次第にその全貌が見えてくる。長編小説というより連作集と言う感じ。最終章ではレマとエリという二人の少女…