とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

読書

「誰でもない者」。そういう存在の生物が世界には十数人はいる、という設定。だから「某」。主人公は最初、丹羽ハルカとして現れた。女子高生として。次いで、同じ高校の男子生徒である野田春眠になった。そして同じ学校の事務員である山中文夫になる。さら…

戦争の記憶

日韓関係が依然、回復していかない。韓国からのアプローチはあるようだが、日本政府の対応が硬直的だ。あいちトリエンナーレの「表現の不自由展・その後」に対する政府の対応も、歴史問題に対して硬直的な姿勢を感じる。何に対して硬直的なのか。「歴史」に…

80年代音楽解体新書

BS12トゥエルビ「ザ・カセットテープ・ミュージック」は最近お気に入りの音楽番組で、毎週欠かさず観ている。その出演者、音楽評論家のスージー鈴木の本は、マイナーなのか、市の図書館に所蔵されていない。先に読んだその内容を本にした「カセットテープ少…

資本主義に出口はあるか☆

タイトルだけ見ると、経済学の本かと思う。しかし荒谷大輔は哲学者。哲学的観点から「この社会」を見つめ直し、「新たな社会」への展望を示す。その意味では「資本主義に出口はあるか」というタイトルは偽りではないが、「新たな社会」の展望はまだ具体性に…

いまどきの死体

法医学者として、日々、多くの遺体の解剖を行っている筆者が、解剖を通じて見えてくる、現代日本の課題や死者それぞれの人生などを具体的に綴っている。ホテルのベッドの上でエコノミークラス症候群により亡くなった女性。交通事故によるハンドル損傷で、三…

官邸官僚

安倍一強体制がいつまでも続いている背景には、今井尚哉首相秘書官ら官邸官僚の存在がある。文藝春秋の連載で続けてきた取材をもとに、彼ら官邸官僚の実態や経歴と現状などをまとめている。取り上げられる官邸官僚は、今井尚哉首相秘書官兼首相補佐官の他に…

子どもの頃から哲学者☆

面白い! こんなに楽しく、そして分かりやすい哲学の本は初めてだ。いつも行く図書館ではなぜかジュニア・コーナーに置いてあったけど、これは絶対、大人が読むべき本だ。そして今、人生に悩んでいる人や哲学に興味がある人に読んでほしい。面白く、でも絶対…

Newton別冊『死とは何か』

ベストセラーになっている「『死』とは何か」とは別の本。ニュートンが別冊で「死とは何か」について特集した。内容はニュートンらしく、ほぼ全編、医学的・生物学的観点から老化や死に関する知見を紹介したもの。だが、心停止、植物状態、閉じこめ症候群、…

すばらしい新世界

「一九八四年」と並ぶディストピア小説の歴史的名作と言われるが、発行はなんと1932年。今から90年近くも前にこんな作品が書かれていたとは、すごい。まずはそのことに驚いた。 読んでみると、内容は「一九八四年」とまったく違っている。「一九八四年」は情…

愛☆

「愛」とは何か? てっきり私は、キリスト教の愛=アガペーについての本だと思っていた。しかし、「キリスト教の『愛』は……極度に理想理念化された、彼岸的な愛の概念」(P40)であり、「義務」としての愛は“真の愛”とは違うとバッサリ切り捨てる。では“真の愛…

いちから聞きたい放射線のほんとう☆

この本をどこで知ったのだったか。池澤夏樹の「科学する心」かな? 福島原発事故から3年後、2014年発行だから、世間では放射線騒ぎもひと段落し始めた頃。しかし事故当時の情報の嵐の中で、これまで聞いたことがなかったシーベルトやベクレルといった言葉が…

人口減少社会のデザイン

イントロダクションで、広井教授を中心とする研究グループが公表した「AIを活用した日本社会の持続可能性と政策提言」に関する研究成果が紹介されている。 私はてっきり、本論でその内容を説明していくのだとばかり思って読み進めていった。第1章「人口減少…

あとは切手を、一枚貼るだけ

奇数回の手紙を小川洋子が書き、偶数回の手紙を堀江敏幸が書き、そうして14通目で終わる。一通めは、「昨日、大きな決断を一つしました。まぶたをずっと、閉じたままでいることに決めたのです。」(P7)という書き出しで始まる。そしてドナルド・エヴァンズの…

日本社会のしくみ

長い! 全部で600ページを超える。しかしその長さに比して、内容は乏しい。冗長としている。「日本社会のしくみ」というタイトルだが、主に日本の雇用体制について、その成立までの歴史を調べたものだ。第2章・第3章で欧米、特にアメリカとドイツの雇用制度…

欧州 旅するフットボール☆

バルセロナに住み、ナンバーやサッカーダイジェストなどを中心に、世界のサッカーシーンを巡る記事を書いているライター。本書では週刊大衆ヴィーナス(知らないけど)の「酒と泪とフットボール」を中心に、各誌で執筆した記事を収めている。併せて、主要都…

路地裏で考える

平川氏が北海道新聞やその他の媒体で執筆してきたエッセイを掲載する。そのほとんどは2017年・2018年だから、比較的最近の心情等を綴っている。このうち、第1章は社会世相や政治経済等を題材としているが、第2章は映画評論、第3章は温泉紀行となっており、第…

街場の文体論

図書館に予約した本の順番がなかなか回ってこない。それで前に一度読んで感銘を受け、文庫版が発行された際に購入した本を読み返してみた。前に読んだ時の記録はこちら。いつも特に記憶に留めたい文章を引用して書き残しているが、6年半経っても引用する部分…

日本サッカーを強くする観戦力

「フットボール批評」のプレゼント抽選に当選し、送られてきました。ありがとうございます。でも、どうしてこの本を選択して応募したんだろう。最近は、自分ではとても買わない本、図書館にもなさそうなマイナーな本をもっぱら選択しているから、そのお蔭か…

理不尽な進化

しばらく前、本書を図書館の書棚で見つけ、いったんは手に取ったものの、あまりの大部さにそのまま書棚に戻したことがあった。先日、池澤夏樹の「科学する心」を読んだら、本書が必読として取り上げられていた。それで改めて図書館から本書を借りてきた。ま…

池の水ぜんぶ”は”抜くな!

相変わらず「池の水を全部抜く」テレビ番組が続けられている。昨年読んだ「外来種は本当に悪者か?」は面白かった。この指摘を日本の現状に照らして考察したものが本書。外来種と在来種の境は非常に曖昧であること。在来種の減少は必ずしも外来種のせいばか…

フットボール批評 issue25

今号の特集は「哲学するフットボール」。実に魅力的なテーマ。だが、サッカー界において「哲学」という言葉は、「理念」や「基本的方向」といった意味で使われることが多い。だから、「サッカーの人生における意味」とか「人は何ゆえにサッカーに興じるのか…

富山は日本のスウェーデン☆

「幸福の増税論」を皮切りに、今年なって井手英策の本を続けざまに読んでいる。井手英策は自身も自覚しているように、2017年の民進党政策立案に参加して以来、すっかりリベラルな学者という評価が定着してしまったようだ。本書もタイトルだけを見れば、富山…

HELLO,DESIGN

当初、本書は都市・建築設計について示唆を与える専門書かと思って読み出した。しかしこれは「ビジネス書」の範疇に入れていいのだろう。筆者は、言ってみれば「プロダクト・デザイナー」かもしれないが、単に工業製品という枠から飛び出して、社会のさまざ…

科学する心

池澤夏樹が大学の物理学科に籍を置いていたことは有名な話。いわゆる理系を思わせる本はこれまでも多く書いている。小説しかり、エッセイしかり。本書は「考える人」他に科学をテーマに連載してきたエッセイをまとめたもの。全部で12章あるが、それぞれテー…

ミッテランの帽子☆

フランスでは現在、ミッテランはどう評価されているのだろう? フランスでの有権者調査によれば、戦後の大統領で最も偉大な人物として、ドゴールと並んで第2位に挙げられているそうだ。 ミッテランが大統領になって5年後の1986年、右派政治家シラク首相との…

経済成長なき幸福国家論

「世界まちかど地政学NEXT」を読んで、最近の藻谷氏の本を読もうと思った。とは言っても、本書は2017年9月の発行だし、平田オリザとの対談本。対談本の常として、どうしても話題がしっかりと煮詰められることなく流れていってしまう。物足りない部分も多いが…

FOOTBALL INTELLIGENCE

サッカー本大賞を受賞した「PITCH LEVEL」はそれなりに楽しんだ。「ウィニング・ストーリー」では、文章力や学ぶ姿勢に驚いた。そして本書では……。 想定以上にフォントが大きく、行間が広い。あっという間に読み終えた。しかも内容が具体的。第1章では、ポジ…

本当の夜をさがして

夜空の明度を段階的に表すための光害基準である「ボートル・スケール」なるものがあるそうだ。アマチュア天文家のジョン・ボートルが考案した。最も明るいクラス9「都心部の空」からクラス1「光害が一切ない素晴らしい土地」まで、光害の状況を9段階で表すス…

救世主監督 片野坂知宏

先日読んだ「監督の異常な熱情」は面白かった。著者ひぐらしひなつの新刊本が出版された。トリニータ番として片野坂監督を追いかけた本だ。期待を持って読み始めた。 相変わらず、ひぐらしひなつの文章は楽しい。だが本書は、J1昇格を決めた2018年の全ゲーム…

社会学史☆

見田宗介に感銘し、大澤真幸や橋爪大三郎に喜び、一方で上野千鶴子や山田昌弘らの本はわかりやすく読むことができる。若手では山下祐介もいれば、古市憲寿も社会学者だという。もちろん、現代社会の状況を調査し、解明し、政策指針等を示すことも社会学の一…