とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

読書

フットボール批評 issue25

今号の特集は「哲学するフットボール」。実に魅力的なテーマ。だが、サッカー界において「哲学」という言葉は、「理念」や「基本的方向」といった意味で使われることが多い。だから、「サッカーの人生における意味」とか「人は何ゆえにサッカーに興じるのか…

富山は日本のスウェーデン☆

「幸福の増税論」を皮切りに、今年なって井手英策の本を続けざまに読んでいる。井手英策は自身も自覚しているように、2017年の民進党政策立案に参加して以来、すっかりリベラルな学者という評価が定着してしまったようだ。本書もタイトルだけを見れば、富山…

HELLO,DESIGN

当初、本書は都市・建築設計について示唆を与える専門書かと思って読み出した。しかしこれは「ビジネス書」の範疇に入れていいのだろう。筆者は、言ってみれば「プロダクト・デザイナー」かもしれないが、単に工業製品という枠から飛び出して、社会のさまざ…

科学する心

池澤夏樹が大学の物理学科に籍を置いていたことは有名な話。いわゆる理系を思わせる本はこれまでも多く書いている。小説しかり、エッセイしかり。本書は「考える人」他に科学をテーマに連載してきたエッセイをまとめたもの。全部で12章あるが、それぞれテー…

ミッテランの帽子☆

フランスでは現在、ミッテランはどう評価されているのだろう? フランスでの有権者調査によれば、戦後の大統領で最も偉大な人物として、ドゴールと並んで第2位に挙げられているそうだ。 ミッテランが大統領になって5年後の1986年、右派政治家シラク首相との…

経済成長なき幸福国家論

「世界まちかど地政学NEXT」を読んで、最近の藻谷氏の本を読もうと思った。とは言っても、本書は2017年9月の発行だし、平田オリザとの対談本。対談本の常として、どうしても話題がしっかりと煮詰められることなく流れていってしまう。物足りない部分も多いが…

FOOTBALL INTELLIGENCE

サッカー本大賞を受賞した「PITCH LEVEL」はそれなりに楽しんだ。「ウィニング・ストーリー」では、文章力や学ぶ姿勢に驚いた。そして本書では……。 想定以上にフォントが大きく、行間が広い。あっという間に読み終えた。しかも内容が具体的。第1章では、ポジ…

本当の夜をさがして

夜空の明度を段階的に表すための光害基準である「ボートル・スケール」なるものがあるそうだ。アマチュア天文家のジョン・ボートルが考案した。最も明るいクラス9「都心部の空」からクラス1「光害が一切ない素晴らしい土地」まで、光害の状況を9段階で表すス…

救世主監督 片野坂知宏

先日読んだ「監督の異常な熱情」は面白かった。著者ひぐらしひなつの新刊本が出版された。トリニータ番として片野坂監督を追いかけた本だ。期待を持って読み始めた。 相変わらず、ひぐらしひなつの文章は楽しい。だが本書は、J1昇格を決めた2018年の全ゲーム…

社会学史☆

見田宗介に感銘し、大澤真幸や橋爪大三郎に喜び、一方で上野千鶴子や山田昌弘らの本はわかりやすく読むことができる。若手では山下祐介もいれば、古市憲寿も社会学者だという。もちろん、現代社会の状況を調査し、解明し、政策指針等を示すことも社会学の一…

往復書簡 無目的な思索の応答

中日新聞(東京新聞)の夕刊に掲載されていたコラムを収録したもの。そういえば最近は武田砂鉄のコラム、読んでないかな。もう終わったみたい。連載されていた時は、わかったような、わからないような、何を煮え切らないことを書いているんだろう、と思った…

9条入門☆

加藤典洋が亡くなった。まだ71歳。惜しい死と言える。本書が絶筆。「ひとまずのあとがき」に、安保改定から現在までの歴史については「次の本で書く」と書いてある。読めないことが残念だ。 私が初めて加藤典洋を読んだのは「村上春樹は、むずかしい」からだ…

リベラルは死なない

井手英策が気になって思わず買ってしまったけど、井手英策が書いているのは、「はじめに」と序章だけで、あとは7人の立憲民主党や国民民主党の国会議員だった。ちょっとがっかり。それでもせっかく買った本なので、終わりまで読んでみることにした。 序章の…

ふたつの日本

中日新聞の書評で本書を知って、読みたいと思った。その時は、もう一つの日本=すなわち移民たちが生活する社会の様子がドキュメント風に描かれた本かと思っていた。しかし、そうした記述もあるが、何より「移民」=「在留外国人」の実態を、数字や制度に応…

世界まちかど地政学NEXT

「世界まちかど地政学」の続編。藻谷氏はさらに旅を続け、本書ではラオス、東ティモール、パラグアイ、ニューヨーク、クロアチア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、モンテネグロ、セルビア、北マケドニア、コソヴォ、アルバニア、ルクセンブルク、アンドラ、モナ…

フィデル誕生

キューバ革命を題材にしたシリーズ「ポーラースター」の第3部。革命家チェ・ゲバラを主人公とした第1部「ゲバラ覚醒」、第2部「ゲバラ漂流」に続く第3部は一転、フィデル・カストロが主人公だ。それも「1部 あるガルシア人の物語」は、カステロの父アンヘル…

監督の異常な愛情☆

サッカー本大賞2019の読者賞を受賞した。「または私は如何にして心配するのをやめてこの稼業を・愛する・ようになったか」というのは副題なんだろうか。「ひぐらしひなつ」というライターも知らなかったが、本書を読んですっかりファンになった。今月頭には…

ディス・イズ・ザ・デイ☆

今年の「サッカー本大賞2019」の大賞を受賞したというのでさっそく読んでみた。面白かった。津村記久子と言えば確か芥川賞作家。そう「ポトスライムの舟」で芥川賞を受賞しているが、これまで読んだことはなかった。こんな文章を書く人なのか。庶民的ですご…

観光亡国論☆

GWに山陰地方を旅行した。GWだからか、それほど外国人の姿は見かけなかったが、京都などではすごい状況になっているという話はよく聞く。一昨年、下呂に行った時も中国人客が多いなあという印象を持った。幸い、私が行きたいと思う旅行先はマニアックなとこ…

街場の平成論

元号が変わってもう3週間が過ぎようとしている。あまりに「令和」「令和」と連呼するものだから、前の元号が「平成」だったことをもうすっかり忘れそうだ。そもそも「平成」と言われた30年間を切り取って、どんな時代だったかと振り返っても、その区切りにど…

フットボール批評 issue24

今号の特集は「V字回復クラブの強化書」。マリノスとグランパス、そしてトリニータの現在の経営陣、強化部、そして選手へのインタビューで構成する。グランパスからは大森SDだけなのは少し寂しいが、それでも具体的な選手個人名が挙げられ、興味深く読んだ。…

経済の時代の終焉☆

「幸福の増税論」以来、井手英策に注目している。新書も多く出ているが、本書はそのバックボーンとしての現状の経済分析を歴史的に追いかけた専門書である。 「本巻は歴史の書である」(P18)という文章が序章に書かれているが、確かに、第1章では日本や世界各…

神とは何か

「正義とは何か」を読んだ時も、途中でもう読むのはやめようかと思った。本書も同様、あまりに難しい。それでも最後まで読んでしまったのは、筆者が自らの論考をただ推し進めていくだけではなく、常に読者を意識して「こう思われるかもしれない」「こう考え…

億万長者サッカークラブ☆

先月発表された「サッカー本大賞2019」で翻訳サッカー本大賞に選出されている。タイトルだけを見ると、欧州の多くのサッカークラブがオイルマネー等により買収されている実態を描いたものかと思ったが、単に表面をなぞるだけではなく、買収する側、される側…

一神教と戦争☆

キリスト教にせよ、イスラームにせよ、一神教だから戦争が起きる。いや、そんなわかりやすい話ではない。キリスト教に造詣の深い橋爪大三郎氏。自らイスラームとしてカリフ制再興を唱える中田考氏。欧米と中東から始まるイスラーム圏の確執を、それぞれの宗…

対立の世紀

グローバル化の結果、現代が「対立の世紀」になってきているということは誰もが実感し賛同することだろう。資本主義が経済のグローバル化に浸潤される中で、一国の中における格差を拡大し、壁と対立が立ち現れてきている。さらに、AIと自動化というデジタル…

未来の再建

「幸福の増税論」は今年これまでに読んだ中で最も印象に残っている本であり、筆者の井手英策の本であれば何でも読みたいという気持ちのまま、本書を購入してしまった。だがこれは共著。貧困問題・社会福祉が専門の藤田孝典、労働問題の専門家である今野晴貴…

箱の中の天皇

表題の作品と、もう一編「大津波のあと」を収録する。 赤坂真理といえば「東京プリズン」。そして「愛と暴力の戦後とその後」も読んだ。前者は小説。後者は評論。いずれも現在の日本の状況を、戦後をうまく処理してこなかった結果として捉え、問題視している…

スッキリ中国論☆

「スジの日本、量の中国」という副題が付いている。その一言で全ては説明尽くされる。もちろん個人で差はあるが、これこそがそれぞれの社会のクセであり、行動原理である。私には中国へ行った経験も中国人の知り合いもいないから真偽の判断はできないが、筆…

知ってはいけない2

「知ってはいけない」ではもっぱら、現在のアメリカに対する日本の属国状態がなぜ現在まで続いているのか、その法的な経緯や現状が説明されていた。本書ではそうした法的状況に陥った原因として、岸首相が同意した「密約」の存在と、日本では「密約などない…