とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

読書

女王ロアーナ、神秘の炎

60歳を過ぎた古書店主ボドーニは、ある事故によりそれまでの記憶を失ってしまった。全部ではない。生活上で必要な意味記憶などは残りつつ、自分自身に関するエピーソード記憶だけが失われてしまった。妻と会い、子供と会い、友人や部下に会って、「あなたは…

PITCH LEVEL

昨年の「サッカー本大賞」の大賞を受賞した作品というので楽しみに本書を手にした。しかし同時にサッカー選手が書いた本というので、ライターが書いた自伝ではないとは知っていたが、なおさらのこと内容には半信半疑な感じ。でも読み始めると、思った以上に…

特急二十世紀の夜と、いくつかの小さなブレークスルー

カズオ・イシグロのノーベル文学賞受賞記念講演の講演録。100ページ足らずの短い本に、見開きで英語と日本語の文章が並んでいる。日本語と英文を交互に読み終えた後に、もう一度、日本語で通読をした。ところで何が言いたかったのだろう。 たぶん、「私にと…

砕かれたハリルホジッチ・プラン

30日のガーナ戦は酷かった。選手はこれまで以上に積極的にプレーしていたが、どんな戦術で戦っていこうとしているのか、それが見えなかった。おまえにそんな眼力はないだろ、というのはそのとおり。西野監督が寡黙で何も話してくれないことも理由の一つ。本…

神になりたかった男 徳田虎雄

名古屋徳洲会病院はすぐ近くにあり、7年ほど前には「尿管結石さわぎ」で書いたように、救急車で運ばれたこともある。つい先日も膵嚢胞の検査で診察を受けたばかりだ。一方で数年前、徳洲会事件が大きくマスコミを賑わせていた。猪瀬元都知事が辞任する契機に…

逆さに吊るされた男

田口ランディは少し気になっていた作家。本書がオウム真理教の死刑囚との交流を題材とした小説ということを知って、読んでみた。モデルとなっているYこと、林泰夫との交流はもう途絶えてしまったのだろうか。小説では最後に「20**年 Y 死刑執行」と書かれて…

ルポ 雇用なしで生きる

「21世紀の楕円幻想論」の中で本書が紹介されており、興味を持った。等価交換モデルではない経済システム。それを本書では「もうひとつの経済」と呼ぶ。いや、筆者が感銘を受け、スペインを取材するきっかけとなった本「雇用なしで生きる」の筆者、フリオ・…

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直木賞作家・西可奈子を初めて読んだ。本書は昨年の本屋大賞にノミネートされて、紹介されていた。結果的に7位だったけれど、10位までに読んだことのある本は1冊もないので、評価が適切だったかどうかわからない。書評などを読んで、これは読みたいと思った…

世界まちかど地政学☆

「デフレの正体」で一躍有名になった藻谷氏だが、地域活性化に関する地元に根差した提言や講演には定評があるところ。「経済プレミア」を見ると「地域エコノミスト」と肩書がついている。「里山資本主義」も大きな評判になった。その後、「高校生からのマク…

すべての新聞は「偏って」いる

メディアとの付き合い方、メディア・リテラシーの重要性と今後のメディアのあり方、ウェブ言論の将来性などを語る。ただし、あとがきでも書かれているように、一直線にメディア・リテラシーを語るのではなく、アンケートや新聞データベースの分析などにより…

「司馬遼太郎」で学ぶ日本史

司馬遼太郎の作品を吟味し、歴史的事実と虚構とを腑分けしつつ日本史に迫る本かと思っていたら、全然違った。司馬良太良の代表的な作品、「国盗り物語」「花神」「坂の上の雲」「この国のかたち」などを取り上げて、戦国時代、幕末、明治、戦前の各時代を司…

フットボール批評issue20

突然の、不可解なハリルホジッチ監督の解任。初めてそのニュースを聞いた時の衝撃を「ハリルホジッチ監督解任って、協会は脳梗塞でも起こしたのか!?」で書いたが、大手メディアは突然の報に驚きつつも、新監督の実績を紹介しつつ、W杯への期待を伝えようと…

日本の異界 名古屋☆

井上章一の「京都ぎらい」のヒットで本書も書かれることになったのだろうか。名古屋の異質さや特徴を書いた本はたくさんあるだろうが、より楽しく、より深く、名古屋のことを知るには、この人を置いていない。そう思って読み始めた。しかし読んでいて驚いた…

日本史の内幕

BSプレミアムの「英雄たちの選択」は最近欠かさず見ている。司会の磯田道史の本は初めて読んだが、何と、磯田氏は15歳から古文書を読んできた人だったのか。本書はそうして古文書を読む中で発見した歴史の内幕を綴った歴史エッセイ集。読売新聞他で連載した…

21世紀の楕円幻想論

第1章「生きるための負債」の冒頭に近い部分で、「負債論」(デヴィッド・グレーバー)からの引用として、「エスキモーの本」(ピーター・フロイヘン)の紹介がある。「猟に成功した狩人が肉を持ってきてくれたので礼を言ったら、憤然と抗議された」(P030)と…

日本サッカー「戦記」☆

「季刊サッカー批評」で連載されてきた「日本サッカー戦記」は今も連載が続いているのだろうか。本書には2017年9月19日発行のissue87に掲載された記事までが掲載されているが、ネットで検索すると、issue88が12月に発行された後、issue89は18年5月発行予定の…

戦後入門☆

加藤典洋の「敗者の想像力」を読んで以降、加藤氏の「戦後」に関する一連の論文を読んでみたいと思っていた。この「戦後入門」は2015年発行で、1985年発行の「アメリカの影」、1997年発行の「敗戦後論」を踏まえ、それらを再び批評しつつ、現在の安倍政権を…

月の満ち欠け

昨年の夏、本書の書評を読んだ時には、もっと幻想的な、生と死の間を揺れ動く、どちらかと言えば難しい小説だと思っていた。昨夏に予約をして、ようやく順番が回ってきた。読み始めると、思っていたよりもずっと現実的な話。何不自由ない会社員の家庭で、娘…

ないものがある世界

今福龍太と言えば「フットボールの新世紀」だが、本来は文化人類学者。中南米や群島諸国といったボーダーでディアスポラな民衆社会をベースに現代社会批評をしてきた人、というイメージでいたが、その今福龍太が小説を書いた、というので少し驚いて、本書を…

バースデイ・ガール

村上春樹が過去に書いた短編の一つに、カット・メンシックがイラストを添えたシリーズの4冊目。前作の「図書館奇譚」にも書いたように、個人的にはカット・メンシックのイラストはあまり好きではない。でもまあ、全ページ、赤とピンクとオレンジと白の4色で…

応仁の乱

一昨年、ベストセラーとなった「応仁の乱」をようやく読んだ。「こんな専門書がどうしてこれほどのベストセラーになったのか」と言われ、どんな難しい内容かと心配したし、それがこれまで手が出なかった理由でもあるが、読んでみると、ベストセラーになるだ…

世界で一番のクリスマス

風俗業界における人間の生き様、悲しみを描く。これまで、東日本大震災での釜石市の遺体収容と安置の状況を描いた「遺体」などのノンフィクションを書いてきた石井光太が、「蛍の森」で初めて小説を発表したのが2013年。これはハンセン病患者の住む部落にお…

金曜日の本

ごく薄い本である。125ページ。かつ小判で文字も大きい。だから一気に読んでしまえる。内容も筆者の自伝的エッセイと短編小説が一つ。エッセイは少年時代を振り返るもので、読みやすい。私も同じようなことがあった、同じように感じた、と読みながら自分の少…

口笛の上手な白雪姫

八つの小編が収められた短編集。共通点は、いずれも幼い子供が主人公、かと思ったが、一つだけ、そうではない作品が入っていた。「仮名の作家」。好きな作家に同一化して、妄想の中をさまよう女性を描いた作品。もう一つ、タイトルの「口笛の上手な白雪姫」…

フットボール批評 issue19

いよいよ今季のJリーグが開幕した。今号の特集は「クラブを変革する指揮官の戦略」。「指揮官」には「監督」だけでなく、経営のトップも含んでいる。そして今季J1に昇格したV・ファーレン長崎の高田社長の貢献が巻頭言で挙げられている。 続く内容では、イビ…

9.11後の現代史☆

「9.11後の現代史」とはすなわち「中東の現代史」である。これまでもいくつか中東の現状について解説する類の本を読んだことはあるが、本書が最もわかりやすかった。視座も中立的で、シリアの内紛の構造、イラクの立場、アメリカの外交方針など、現在の中東…

ローカリズム宣言

「TURNS」という雑誌があることすら知らなかったが、そこに連載してきた記事をまとめたもの。でも私の中では、内田樹とUターン・Jターン・Iターンはすぐには結びつかなかった。実際読んでみると、あまり地方移住者には関係ない内容のような気がする。もち…

無冠、されど至強

都立朝鮮人高校で全国高校サッカー選手権に出場し、ベスト4になった1955年1月。チームには金明植がいた。しかしその年の4月。朝鮮人高校は都立でなくなり、高体連の大会への出場ができなくなる。その後、金明植は中央大学に進学し、さらに在日朝鮮蹴球団に加…

君たちはどう生きるか☆

今、話題の本を読んでみた。マンガ版でも、新装版でもなく、岩波文庫版。戦後に一部縮小し、修正した版もあるようだが、これは1937年に発行された初版版。早慶戦の場面や高輪の豪邸など、現在に照らすと若干、時代を感じさせる部分も、ほとんどは現在におい…

世界神話学入門☆

高校時代の友人がfacebookで「夫が執筆した本」ということで紹介してくれた。神話に強い関心があったわけではないが、半分義理の思いもあって購読した。南山大学の人類学博物館には30代の頃、仕事の企画の一環でお邪魔したことがあった。著者は現在、同大学…