とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

読書

穴あきエフの初恋祭り

昨年11月、多和田葉子の「献灯使」が「全米図書賞」を受賞したというニュースが流れていた。福島原発事故を受けて、今後の世界のあり方を描いた「献灯使」は海外での評価は高い。次にノーベル文学賞を受賞するのは多和田葉子ではないか、などと思いつつ、引…

おやすみ、東京

年末から年始にかけて、図書館ではいつもより貸出期間が長くなる。それでついつい数冊の本を借りたが、内容的に難しい本もあって、途中で挫折したもの、まだ悪戦苦闘中のものなどがある。その中にあって、これはきっとやさしく読めるだろうと期待して、後回…

カズオ・イシグロの視線

昨年はカズオ・イシグロがノーベル文学賞を受賞して大いに話題となった。本書はそんなカズオ・イシグロの全作品を素材に、イシグロ文学を多面的に研究した論文集である。7つの長編と1つの短編集について、各研究者からそれぞれの視点で分析し研究した論文が…

逆転した日本史

筆者の河合敦氏は日本史の元高校教師。和同開珎よりも古い無文銀銭。推古天皇の脇役に過ぎない聖徳太子。儒教の徳や仁で統治しようとした徳川家綱。幕末になって出版され有名になった「慶安の御触書」などなど、我々60歳を過ぎようとする高齢者を対象に、か…

2018年、私の読んだ本ベスト10

今年も多くの本を読んできた。都市・建築関係の専門書も入れると、全部で89冊。このブログで紹介したのは71冊。去年よりはかなり多い。今年からめぼしい本にはブログ掲載時に☆を付けることにした。それでベスト10の選定は多少はやりやすくなったが、やはり年…

幻夏

太田愛の第2作目。デビュー作「犯罪者」が企業犯罪を題材にしたものなら、この第2作目は冤罪をテーマにしている。(最初からネタバレなので注意!) 無罪の罪で服役した男。そして冤罪だったことが発表されたその日に、自らの子供の手によって死を迎えた。実…

国体論☆

○現代日本の入り込んだ奇怪な逼塞状態を分析・説明することのできる唯一の概念が、「国体」である。……1945年の敗戦に伴ってもたらされた社会改革によって、「国体」は表面的には廃絶されたにもかかわらず、実は再編されたかたちで生き残ったからである。……そ…

大化改新を考える

このところ歴史興味から本書を借りて読むことになった。「そもそも大化改新って何だっけ」というレベルだから、なかなか読み終えるのは難しかったのだが、大化改新詔の原文から読むというのはこれまでになく、筆者とともに、主文・副文を読み解いていくのは…

永遠のファシズム

本書は1998年に単行本として刊行されたものの文庫化。既に20年も前の出版ながら、今、ファシズムの危機に関する論評を文庫化するというのは、やはり現在の政治状況・国際状況に対する危機意識、警鐘を鳴らすという意図を出版社として持ったということだろう…

正義とは何か

ロールズの正義論を中心に、リベラリズム、リバタリアニズム、コミュタリアニズム、フェミニズム、コスモポリタニズム、ナショナリズムの6つの視点から、正義論について考察する。正直、かなり難解で、途中で一旦投げ出したが、他書を読んだ後でもう一度読み…

サムライブルーの勝利と敗北☆

W杯ロシア大会では望外な結果を手に入れ、浮かれている日本。その後の森保ジャパンでもここまで4勝1分、無敗の成績で来年初頭のアジア杯に臨もうとしている。大迫をトップに、堂安・南野・中島が並ぶ攻撃的なセットはここまで高い破壊力を発揮してきた。しか…

犯罪者

「天上の葦」が面白かったので、筆者のデビュー作を読んでみた。文庫本で上下全960ページ以上。厚い。そして内容も分厚い。通り魔事件に見せかけた殺人事件から食品会社の工程段階における管理ミスからの病気の発生と隠蔽工作。大企業と政治家との繋がり。産…

ウソばっかり!

「竹内久美子」で検索すると「トンデモ本」と出てくる。なるほど確かにそんな気がする。多くの研究事例を引用しつつ、そこから自由に発展して、かなり強引に筆者の望むような結論に導いていく。全編、そんな内容の記述が並ぶ。さすがワニブックス。それにし…

土 地球最後のナゾ

土とは何ぞや? 地面にある岩や砂が風化してできたもの。でもそれだけでは正解ではない。本書によれば下記のように定義されている。 ○学会の定義する「土壌」とは、岩の分解したものと死んだ動植物が混ざったものを指す。この意味では、動植物の存在を確認で…

フットボール批評 issue22

○「この舞台は1000倍最悪だ。だから両足が震えてしまう。でもピッチでは違うよ。ずっと、あそこで過ごしてきたんだ」・・・プロアスリートもセルフブランディングに取り組む必要性が叫ばれるこの時代に、単なるフットボーラーでしかない男が報われたのだった…

異端の時代☆

筆者は神学者・宗教学者であって、宗教としての異端を論じている。しかしそれは同時に現代社会における危機を論じることでもある。現代はまさに異端の時代であり、正統が消失してしまった(しつつある)時代だからだ。 「みんな違ってみんないい」。そんな多…

政治の哲学

タイトルを見て、政治とは何かについて、考察する本だと思っていた。しかし冒頭の第1章で、政治の定義が披露されている。 ○[定義]政治とは、人びとを拘束するようなことがらを、決めることである。(P016) さらに、続く文章の中で、本書の目的が書かれている。…

天上の葦☆

この本を私は「決意をもって書かれた作品 太田愛著 『天上の葦』(KADOKAWA) ネタバレ注意:街の弁護士日記 SINCE1992at名古屋」を読んで知った。上下800ページ近い大部だ。内容は、公安により一人のジャーナリストが社会的に抹殺されようとするのを阻止する3…

これが答えだ!少子化問題

○筆者は少なくとも現状のような少子化対策の傾向が継続するならば、出生率の十全な回復は難しいという見込みをもっている。多少の出生率向上があったとしても「焼け石に水」であり、少子高齢化や人口減少がもたらす弊害とされる経済成長の鈍化や、年金・医療…

戦国日本と大航海時代☆

正直、期待していなかったので、読むのが遅くなってしまった。非常に面白い。なぜ秀吉は朝鮮に出兵したのか? それは、世界征服を狙い、ポルトガルとスペインが東アジアへ進出してきており、それに対抗するためだった。ポルトガルとスペインは当初、南米等と…

現代社会はどこに向かうか

久しぶりに見田宗介の最新刊を読んだ。見田宗介も既に80歳を超えた。さすがに長文の論文ではなく、わずか162ページほどのコンパクトな新書本。内容としては既に広井良典氏などが書いてきた「グローバル定常型社会」を見田氏なりの書きぶりで書いているという…

終わりと始まり 2.0

池澤夏樹が朝日新聞夕刊に連載を続けているコラム「終わりと始まり」の2013年4月から2017年12月までの分を掲載したもの。コラムは2009年にスタートしており、本書に掲載以前のものは、「2.0」のない「終わりと始まり」として既に出版されているとのこと。そ…

劇場

又吉直樹の小説2作目。芥川賞を受賞した「火花」と同様、破滅型の青年を描く。Wikiで又吉の経歴を見ると、舞台の脚本なども書いているようだから、まったくの想像というわけではないだろうが、私自身、演劇の世界にはトンと縁がないので、よくわからない。「…

外来種は本当に悪者か?☆

最近、池を総ざらいして、外来種を退治する類いの番組が流行っている。アメリカザリガミやウシガエルなどお馴染みの生物が外来種として取り出され、退治される。そんな番組を何気なく見ていたら、鯉は外来種だと言って捕獲されていた。ええっ、鯉って外来種…

裸のJリーガー

「フットボール批評」で連載している「Hard After Hard」を書籍化したもの。既に「Hard After Hard かつて絶望を味わったJリーガー」は出版されており、その続編だが、私は前著を読んでいない。本書を読むと、まさに連載時の執筆そのまま。「連載・・・をま…

日本サッカー辛航紀

○死を意識することで初めて見えて来るものがたしかにある。サッカーについて書く本は、もうこれで最期という、それこそ澄み渡った気持ちで自分を奮い立たせてなんとか帰港地にたどり着くことができた。(P357) 樹木希林が亡くなった。さくらももこも翁長知事…

京都で考えた

文字どおり「京都で考えた」ことを綴ったエッセイ。と、短編小説が1編。京都という「街」で「考える」。でも、忘れる。だから「本」を書く。本を読む。『「本」と「街」と「考える」は頭の中でつながっている』(P48)と書いている。 私も、まち歩きが好きだ。…

玉村警部補の巡礼

久しぶりに海堂尊を読んだ。今回は玉村警部補と加納警視正の四国巡礼珍道中を描くもの。もちろん巡礼中に勃発する事件を解決し、さらに遺体すり替え・人生ロンダリングの仕組みも暴いて解決していく。だが、海堂尊のミステリーは、あくまで明るく軽妙なのが…

日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか

2014年発行なので少し前の本だが、当時はそれなりに話題になったことだろう。昨日の「羽鳥モーニングショー」で日米地位協定を取り上げていたが、今やこうした事実は常識となりつつある。また、「故小林侍従日記」の発見で、今再び、昭和天皇の戦争責任につ…

日本の気配

○ムカつくものにムカつくと言うのを忘れたくない。個人が物申せば社会の輪郭はボヤけない。個人が帳尻を合わせようとすれば、力のある人たちに社会を握られる。今、力のある人たちに、自由気ままに社会を握らせすぎだと思う。この本には、そういう疑念を密封…